長谷川三千子さんのご著書二作目。私が「負け犬根性」と呼んできた戦後の精神状態に肉薄できそうな予感がする。
- 作者: 長谷川三千子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/07/09
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
本書に流れる静けさと沈黙は、「敗戦を抱きしめて」のにぎやかさ、猥雑さとは、どれだけの対比であろう。
著者(ジョン・ダワー)は書いている。
この観点からみると、この「上からの革命」のひとつの遺産は、権力を受容するという社会的態度を生きのびさせてことだったといえるだろう。すなわち、政治的・社会的権力に対する集団的諦念の強化、ふつうの人にはことの成り行きを左右することなど出来ないのだという意識の強化である。
(中略)
そして、日本は民主主義国家でありながら、国民一人一人の力で国の先行きを変えることはできないと教育されてきたし、信じられてきた。しかも、それが昭和20年の占領開始以来ほとんどかえられていない。いや、戦中の制度から数えれば昭和16年から21世紀の今日に至るまでまるでなにもかわっていない。しかし、これは実は異常な事態だったのだ。
[書評]敗北を抱きしめて Embracing Defeat: HPO:個人的な意見 ココログ版
私は間違っていたようだ。屈曲点は昭和16年ではなく、昭和20年8月15日だった。戦前、戦中の国家体制が温存されたという考えから、見誤っていた。
神こゝに 敗れたまひぬ――。
『神やぶれたまはず』 長谷川三千子著 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
すさのをも おほくにぬしも
青垣の内つ御庭みにわの
宮出でゝ さすらひたまふ――。
著者のおっしゃるとおり、この折口信夫の詩に書き表された「神やぶれたまふ」時が「負け犬根性」の出発点であり、私ですら感じる停滞とはこの瞬間のだらだらとした瞬間なのかもしれない。よくよく覚悟をもって拝読したい。