私にとって「内乱罪」を発見した大切なエントリーなので、転載しておく。
ごはんをたべてて思いついた。もしかして、道州制や地方分権がすすまないのは、井上ひさしが悪いんじゃなかろうかと。考えてみれば、ついこの間まで日本の国の中でどんぱちやっていたし、その前は地方それぞれが別の国で政治的な干渉すらできなかった。それが400年も続いていた。中央集権の現在の政府にとって、道州制というのは、「吉里吉里人」のようにいつ中央政府に刃向かうかもしれない勢力を国内に作ることになるから、脅威なのではないだろうか?そこまで現在の中央官僚が考えているか、長期的な視線の長さをもっているかという根本的な疑問はあるのだが、井上ひさしの描いた「内乱」は国という存立基盤にとってあやういのかもしれない、という気持ちを国を運営する側にいだかせたと言うことはないだろうか。以下、少し地方自治について考えてみたい。
まずは、「吉里吉里人」。これは、考えてみれば昭和56年の出版なので、もう随分前のこと。確か第二次石油ショックとか騒いでいたころではなかったか?東北のある村が、独立を宣言する。言葉から始まって、国防や金融、医療にいたるまで用意周到に準備されている。モデルは、モナコか香港あたりだったのかもしれないが、特に金融については、大量の金保有を背景に兌換券の通貨を発行することにより、世界中お企業を味方につけるという発想がユニークだし、現実性があるように感じられた。
しかし、現実に、いまの憲法と法の枠組みの中では、独立を宣言することはむずかしい。下手をすると刑法に触れる。
第77条(内乱) 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
1.首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
2.謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は3年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は1年以上10年以下の禁錮に処する。
3.付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、3年以下の禁錮に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第3号に規定する者については、この限りでない。「死刑又は無期禁固」!!!
正直、「吉里吉里人」もストーリー展開はかなりユーモラスに語られていたのだが、ラストまできていきなりの国家の介入のシーンに衝撃を覚えた。まあ、それこそが井上ひさしの狙ったものだったのかもしれない。いずれにせよ、分権はできても独立国になることはどうも難しいようだ。まあ、その井上ひさし氏は現在大分共産党よりの活動をしていると聞く。共産党系の方の娘さんと再婚されたとか...いや、本題にもどろう。
いずれにせよ、中央政府があまり道州制に熱心でないのは、独立国になることはなくとも、自分たちのコントロールが失われてしまうという危機感があるのではないだろうか?この地方分権一括法案の取り扱いと、その後の財源の委譲の仕方を考えていると、地方には力をもたせぬよう、もたせぬようにしている気がしてならない。地方分権について、自分の勉強を含めてちょっと考えてみよう。
ネットで地方分権一括法案をちょっと調べてみるとあるわあるわ、いろいろな言説がいまもアップされている。この法案は既に国会を通って施行され、すでに数年が立っているが、その多くの反対の立場をとる論者たちが触れていたように、財源を伴わない地方分権がますます問題になっているように感じる。たとえば、こんな話もある。地方分権改革推進会議には以下のような記事があった。
これに対して地方財政の状況も、バブル崩壊以降、悪化の一途をたどっている。特に、景気対策に伴う地方債発行の急増は、後年度に公債費負担の大幅な増加をもたらしており、景気低迷に伴う地方税収の伸び悩みと相俟って、地方公共団体の財政構造の硬直化をもたらしている。平成13年度の経常収支比率は87.5%(平成3年度71.3%)、公債費負担比率は18.4%(同10.8%)と、この10年間でいずれも大幅に悪化している。
とにかく、仕事の分担だけ地方自治体に先に委譲してしまい、財源がついていっていないし、石原都知事のホテル税あるいは外形課税のようにどうも批判の対象になっているが、この辺の事情を考えると致し方ないのかもしれないという気になってくる。
私の問題意識は、あくまで国家の転覆を考えるとかではなく、地方分権が遅々としてすすまなかったこと、地方分権一括法案以来私が見る限り地方の財政はますます悪化しているということ、これ以上の道州制のような地方分権がありうるかというあたりにある。今回は、まだまだ勉強が足りないということが分かった。このテーマには、捲土重来を改めて狙う。
吉里吉里人と地方分権: HPO:個人的な意見 ココログ版
もう10年前のエントリー。現在にいたるもなにも国家的な判断ができていない地方分権。寂しい限りだ。
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