HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

英文から日本国憲法の意思が伝わる

これはとても良書。平易に書かれながら、日本国憲法がどのように成立したかが英文を通して伝わってくる。改憲するなら、その元の意思にまで遡ることが不可避。

9条ひとつとっても制定した方々の意図があって、現在のあいまいな表現になったのだと。

問題はなぜ「前項の目的・・・」という文言を加えたかです。
後に政府の憲法調査会で、(9条を検討していた衆議院小委員会の院長だった)芦田(均)氏は次のように述べています。
「私は第9条の2項が原案のままでは我が国の防衛力を奪う結果となることを憂慮いたしのであります。・・・修正の辞句はまことに明瞭を欠くものでありますが、・・・『前項の目的を達するため』という辞句を挿入することによって、原案では無条件に戦力を保有しないとあったものが、一定の条件の下に武力を持たないということになります。・・・いかなる条約にも憲法にも、自営のための武力を禁止したものは世界に存在しておりません。(以下略)」

マッカーサー草案を作ったケーディス大佐も以下のように語っているという。

「私は、”自己の安全を保持するための手段としてさえ”という文言を削除しました。なぜならば・・・日本が攻撃されても自らを守ることができないということになり、このようなことは現実的ではないと思えたからです。私は、どの国家も、自己保存の権利があると思っていました。」

あえて、いまはマッカーサー原案、草案、日本側での修正等の英文を掲げないが、これらの英文の変遷を見ると、芦田氏、ケーディス大佐のおっしゃることがよくわかる。憲法成立の時点から国防軍が将来編成されることも、専守防衛に限定されることも企図されていたのだ。civilianを「文民」という訳語にするまでの過程も本書に記述されているが、これも改憲し、軍隊が成立してもシビリアン・コントロールを徹底するという意思があって、敢えて挿入された辞句なのだという。

先人の意思を強く感じる。これはよくよく勉強していきたい。

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