HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

EUとは平和学の結晶

そう核時代でないいまこそが、大きな戦争が起こりやすい。いまこそ、平和をいかに維持したらいいかが問われている。

その答えのひとつがEUという経済的、政治的統合ではないだろうか?

戦争ができないほど国と国との相互依存が進み、精神的、情報流的、物流的距離がゼロになることこそが平和。平和を崩すよりも、どれだけやっかいで共倒れのリスクがあっても平和を維持することの方がいいと誰でも思える社会環境をEUは生み出すことに成功した。これほどの平和学の成果があるだろうか?

この意味で、EUがこのタイミングでノーベル平和賞を受賞するのは、この未曾有宇の経済危機においても、第一次世界大戦、経済大恐慌、そして第二次世界大戦と進んでいった歴史を繰り返すなという貴重なメッセージだ。戦争の規模を拡大させてダイナマイトの発明者であるノーベルから贈られるのにふさわしい理由で、ふさわしいタイミングだ。

オスロでの平和賞受賞者発表の際、ノルウェーノーベル賞委員会のヤーグラン委員長は、授賞理由として、EUが平和及び紛争の平和的調整、民主主義と人権擁護を目指す戦いを成功裏に進めてきた業績を挙げている。

チェコ大統領「EUのノーベル平和賞受賞は悲劇的誤り」: The Voice of Russia

一方、今回の領土をめぐる日本、中国、韓国の争いは、それぞれの現在の経済的な困窮に根本原因があることは明白。この三国は、現実には相互依存が進んでいるにもかかわらず、EUのような明確に平和のために相互依存するぞ、平和を乱すとお互い損だぞという国民的合意を生み出せずにいる。

経済的政治的合同が進まないまま相互依存が進むのは、米国人が小さな山火事を消さなくなったのと同じ。小さな山火事は起こしてないと、とてつもなく大きな火事がおこる原理。小さな火だね大きな争いが産まれかねない空気がある。それは、とても恐ろしいこと。

EUのノーベル平和賞受賞は、日中韓三国への大きなメッセージかもしれない。

戦争を知るための平和学入門 (ちくまプリマーブックス)

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