HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「いい男だねぇ」

「ここ」にいくと「いい男だ」と言われる。ちなみに、私の容姿は取り立て見るべきところのない十人並以下。「ここ」以外で「いい男」だなんて言われることはない。「ここ」は、美人の女性が脇でお酒をつくってくれるような「ところ」ではない。

老人施設だ。

特別養護老人ホームにボランティアに最初に行ったのは何年前だったか。車いすに乗った老人や、痴呆で自分でご飯を食べられない人がたくさんいた。同世代の仲間と行った。職員の方によると、車いす、痴呆であっても、そこそこの年齢の男性達がいくと女性たちがいろめきたち、興奮するのだそうだ。「いい男だねえ」を連発された。いうまでもなく、「ここ」の十人の九割は女性。

それから、さまざまな機会にこのような場所にいった。同じパターンを見た。年をとって様々な機能が失われても、「いい男」だと思って興奮できるということは驚きであった。年を取っても人間は「色」ごとには敏感だ。

あとやっぱり男はか弱い。三年連続で行った。最初の年は元気で私達とふざけてたお爺さんがいた。二年目には車いすだった。三年目にはもういなかった。その間、女性達は変わらず元気に見えた。

逆の例もある。少し自分の倫理規定に反するが、告白してしまおう。八十をとうに過ぎて「現役」だという男性に会った。女性の中でまだ「射精」できるのだと話してくれた。そして、その証拠としてこれまでつきあってきた女性のあられもない姿を収めたアルバムを見せてくれた。すさまじいとしかいいようがない。年を取ればとるほど個人差が開くのも人間の特徴だと聞いた。

シニア、お年寄りと呼ぶしかない男女が、手をつないで歩いているのを見る。すばらしいなと思う。金婚式を開くほど長く一緒にいる夫妻が近くにいる。

年をとって、一人でいるよりも、二人出いる方が楽しいのだろうなとは思う。