石油をめぐる6人姉妹が「不都合な真実」を演出していたと考えると確かに符号することはある。
- 作者: 増田悦佐
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2011/08/05
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確かに国家間の関係が安定し、石油を含む物流がスムーズにいけばいくほど物の価格はさがっていく。「繁栄」のマット・リドリーが電球や自動車などの歴史的な価格の推移で検証したように、比較優位という分業、専門化、生産性向上が続く限り製品の値段はさがっていく。電球の「価格」を貨幣という金額で計るのではなく、電球を買うために必要な労働時間で計るというチャーミングな発想に脱帽した。昔は一ヶ月以上の労働が必要だった電球が、現在の東京では、パートの賃金でですらほんの15分も働けば電球を手に入れることはできる。
この数十年、第二次オイルショック、イラン・イラク戦争、そして、地球温暖化と、一件石油メジャーを苦しめるイベントが続いたように見えるが、すべて石油の希少性を高め、価格を操作するためだと思えば、納得できる。商売をやった人なら、量を拡大するより、利益幅を拡大する方が社員も経営者も幸せになれることが多いことを知っている。
そう、考えると米国の中東、アフリカへの関わり方もどこか破壊的に見えるのは、中東からの石油の輸入を安定化させるのではなく、不安定化させることによる石油価格をあげようとしているのだととらえることが可能だ。
米国が自由貿易の原則を貫いてきた70年代までよりも、混乱と動乱の80年代以降の四半世紀の方がメジャーの利益の総額が大きいという分析は説得力がある。石油以外にも、1979年以降の25年間で米国の医療費は8倍になり、大学の学費は5倍になったという。明らかに自由市場の進展がもたらす価格逓減の法則に反している。
初めて石油ビジネスがどのようなものであるか理解できた気がする。
マット・リドリーに戻れば、かくして「なぜアフリカは停滞しつづけるのか?」という問いに一定の答えが見いだせる。