HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

合宿生活

寝食を共にして、はじめてわかることがある。

木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)

木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)

ほとんど神の領域だろうという西岡棟梁の語りも、仕事の上でも、生き方の上でも参考にはなった。今回、地の巻、人の巻を読んで、西岡棟梁の姿以上に、息子ではないのにその技術をついだ小川親方、そして、親方につく弟子たちの語りに実感を持てた。私自身の生き方と仕事に、彼らのそれを重ねてしまうからだ。小川親方が鵤工舎を設立し、運営する姿と自分を重ねてしまう。年代的にも小川親方につく弟子たちと私は一緒だ。

いまの風潮だと儲からない仕事はしない、利益のあがらないことはしないというのが常識になっているのだが、そうではない仕事というのはあるのではないだろうか?どんな仕事にもそれはそれなりに醍醐味というものがある。西岡棟梁もその醍醐味を十分に知り尽くしたからこそ、晩年にこそ世間から注目されたかもしれないが営々と自分の仕事を続けてこられたわけだ。

仕事というのは単に儲かる、儲からないでするものではない - HPO:機密日誌

ここに小川親方はひとつの答えを出して、いまもつづけていらっしゃる。


ちなみに、学生のころ、ボートをやっていて、長い間合宿生活を送っていた。そうそう、思い出してみれば高校時代は寮生活をしていた。ひとつの目的に対して、ただただストイックに追求する生活を通してしか会得できないものはある。鵤工舎のお弟子さんたちの言葉も、そのまま読めば普通の若者の言葉だが、その裏には、寝食をともにするストイックさと、大工仕事の行動がみえかくれしているように感じられた。それは、同じような生活や仕事をしたものにのみ通じる。

合理性でははかれないものがここにある。こうすれば、こうなるからと先読みしていてはできない行動がここにある。