紅子さんにはまってしまった。紅子さんは、上海の外灘の歩道を歩いていたときに、人生の真実のひとつに気づいてしまったのだ。
対岸にそびえる数十棟の光の柱を見ているうちに、不意に、やがてすべて無になる、という言葉に掴まった。圧倒してくる光の柱のことではなく、わたし自身のカラダのこと。(中略)
あのとき、わたしを抱いてくれる男が欲しいと思った。性の欲望では無かった。快楽が欲しいのとも違った。ただわたしの人生で欠けているものが、はっきりと見えたのだ。
人が道をあやまるというこは、こういう瞬間からなのかもしれない。特に、アンカーを下ろしていない生き方をしている人には、こういう気付きが時にとても危険なのだ。

- 作者: 高樹のぶ子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/06/02
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外灘は、ずいぶん前に昼間にいった。改めて、上海の街を夜歩いてみたくなった。「甘苦上海」は上海のすぐれた観光ガイドでもある。