紅子さんの旅の終わりが、道元が如浄禅師と出会った天童山だというのは．．．、反則だ。
「修行する人たちは煩悩を捨てに来るんでしょうが、捨てられない。捨てる必要がない。煩悩を抱えて生きて行こう、そんな決心をして山を下りる人も居るんじゃないかしら。生きていれば悪いことも沢山する。それ以上に良いことをするしか無いんだと思った。生きるってことはその両方で、死ねば両方が無くなる。無いより在った方がいい。ひどく単純なことを考えながら、階段を一番上まで上がったのよ。わたしまだ、結構体力あるんだな。自信が出てきちゃった。」
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この紅子さんの覚悟は、「やがてすべて無になる」の答えであり、ひとつの終着点なのだろう。
それにしても、紅子さんの話し方はどこかで聞いたことがあるような気がしてならない。「甘苦上海」を読んでいる間中、紅子さんのリアルな声が聞こえてくるようだった。
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