記憶とは不思議なものだ。たまたま「野性の証明」の表紙が目について手に取ってしまった。

- 作者: 森村誠一
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読み始めると映画の冒頭の場面が鮮明に浮かんできた。
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それでもそこから先が思い出せないまま小説を読み続けた。映画版はなんども見たはずなのに、小説の流れに対応するような場面がひとつも思い出せなかった。まるでユニコーンの棲む森の中に迷い込んだような感覚だった。読みながら寝てしまった。
翌朝、ふろをあびながら考えていると薬師丸ひろ子と高倉健の場面がいくつか浮かび、ストーリーもあらかた思い出せた。映画版では明確に親子の愛情を感じさせる場面があった。自己を犠牲にしてでも相手を生かしたいという想いが込められていた。
なによりも、現在ではなく高校生であった薬師丸ひろ子が鮮明に思い出された。姿が浮かぶと当時の思いまで私の胸のなかからわきあがってくるのが不思議であった。
紅茶の香りから、あるいは花の香りから大河小説ほどの思い出をよみがえらせることはできないが、人のこころの奥には忘れたふりをしているだけの私の物語のかけらがいっぱい詰まっているのだと知った。
やば!
■追記
ふと思ったのだが、私のように忘れっぽい人間は幸いなのかもしれない。おさないときからの記憶と、その時その時の感情をそのまま記憶できる人がいたとしたら、生きていくのはさぞかしお辛いであろう。