HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

ご冗談でしょう、高橋洋一さん

とりあえず日本国民全員が読むべき本だと。

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)

この本は高橋さんがしゃべったそのままを記録した本なのだろう。さらさらとあっという間に読め、わかりやすく日本の現状をプレゼンしてくださる。そして読了した後に、いかに今の日本が困難に直面しているかを実感させてくれる。

実際、私が日常仕事をしていても、仕事関連で会う方々でも、みな口ぐちにいうのは、行政の規制と法規の変更が最大の環境要因だということだ。業種を問わず、知らないところで基準値があがり、規制が厳しくなり、そこに追随するためだけに莫大なコストがかかり、会社組織がきしむ。場合によっては、消えて行っている。これまたみなさんが口々に言うのはそうした規制の厳格化が最終消費者のためにひとつもならないということだ。正直に、私の仕事において調達元のいくつかの業種が消え去りつつあり、今後仕事を通してこれまでと同じ価格でこれまでと同じ品質の成果を顧客に渡していくことが、主に規制の問題で困難をきたしつつある部分がある。

いま、国際プロジェクトに関する本の感想をまとめつつあるのだが、結論からいえば日本の法律体系、契約慣行は、政府がWTOに準じて整備することを約束しながら全然進んでいない。このために業界全体がガラパゴス絶滅危惧種になりつつあるのだという。いつぞやどこかのニュースで、中国ではWTOを全面的に受け入れるために全国民が血と汗をながし、苦しみに耐えなければ今後の発展はないのだと、アナウンスされていると聞いた。その時は、ふんそうなのか程度の受け取り方をしたのだが、考えて見れば独自の慣行と法規体系にこだわる、日本だけが世界市場から取り残されることをこれは暗示している。そして、業界自体をガラパゴス化させていく。

たとえば、太陽光発電で最も低価格での発電方法を日本のメーカーは採用しないという。

毒性のあるカドミウム(Cd)とテルル(Te)化合物を使う太陽電池であるが、高効率薄膜太陽電池として期待されている。現在はこの電池に取り組む日系メーカーはない。また、毒性のあることから、日本では販売されない。海外では米国のFirst Solarがほぼ独走する形で生産・販売量を伸ばしている。同社の成長が市場全体を牽引しているともいえる。07年を通して太陽電池を販売したメーカーの中で、同社の太陽電池は全ての太陽電池の種類を含めて、最も安かった。大型案件での引き合いが強く、販売は好調で、積極的な生産計画を立てている。同社の売上はドイツが主流。07年時点で生産はドイツと米国で行われていたが、今後マレーシアでも生産が始まる。

世界の太陽電池市場の動向を調査

カドミウムというと山本七平の「空気の研究」を思い出してしまうのは私だけだろうか?あの公害病の騒ぎのさなかにカドミウムには毒性はないとする研究者の言葉を紹介していた。

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

高橋さんの本に始まる一連の本の先へと考えざるを得ない。いまの自分のおかれた立場をベースにこの国の将来、アジアの将来、世界の将来を考え始めると止まらなくなる。標準化の持つ意味からも読み始めたこの本の示唆するところは深刻だ。

アジア三国志

アジア三国志