HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

貨幣の崩壊はべき分布する

読了。非常におもしろい。フラクタルという自然界の複雑さを記述する考え方は、やはり金融崩壊についても応用可能であると。しかも、マンデルブロ博士の業績のごく初期から応用されていたことを知った。

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

最後まで読んで、改めて疑問をもった。アプローチは全く違っても、マンデルブロ博士と同じように金融システムの崩壊について物理学的なアプローチで取り組まれた安冨先生のシミュレーションの結果でも貨幣の崩壊はべき分布していたのだろうか?それはそのままマルチフラクタルとマルチエージェントシミュレーションとの近似性、ジュリア集合の式とロジスティック式の形式的な類似の話へつながるのではないか?*1

あ、する、する。ちゃんとでてる!

*2

貨幣の複雑性―生成と崩壊の理論

貨幣の複雑性―生成と崩壊の理論

もちょっと普通の言葉で話せば、フラクタルとは、世代交代、生成という性質が元から備えている形式なのだろう。ロジスティック式がというそもそも生物の世代から世代への個体数の変異を示す「形式」からカオスの性質が見いだされたように、元からフラクタルにも「産土(うぶすな)」というべき、一定の型が世代から世代へ、植物の枝から枝へ、海の波から波へと伝えられていく様を形式化した考え方だといえるのではないだろうか?

この関係性においてだけでも投資の理論は大きく変わってくるのではないだろうか?同様にして経済学も。

生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

真剣にマンデルブロ博士の本書を読むと投資をするという行為自体を考え直すことが大切だという気になる。それは、もしかすると恣意性をもつ信用創出に手を貸すだけの行為かもしれない。お金の増殖を加速させるだけなのだ。言わばお金がお金を増殖させるプロセスとは、生物の力の本質とは子を産み、育てることなのだという普遍的とパラレルなのだ。ただ、その増殖する力があまりに過剰であればその種、その貨幣、その経済システム自体が崩壊しかねないのだと。自分がそうした危険さを持つ人という生物種であるという事実に謙虚でありたい。


■追記

やっぱり経済学も変わるんですな。

あまりにも完成度が高すぎ、数学的にむずかしいため、研究の後継者がいなかったが、最近ようやく彼を継承する経済理論が出てきた(e.g. Aoki-Yoshikawa)。

池田信夫 blog : 禁断の市場

*1:いや、あの経済学も数学もまったく素人な私の妄想かもしれない、とfootnoteしておく。

*2:勝手にスキャンしております。もうしわけございません!>安冨先生