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HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?」を読み始める

山形浩生さんが「よい要約がちゃんと本文にある」とおっしゃっていたので、「プロローグ」、「エピローグ」、「結論」をとりあえず読んだ。あ、もちろん改訂版の序も、ダニエル・デネットの序も。これは間違いなく良書。内容的には、私の愛読書、マット・リドレーの「徳の起源」、「繁栄」と重なる部分が多いが、論旨が非常に明確。翻訳も良い。人類の繁栄がいかにもろいものであるか。億年単位で他人への信頼が産まれることがいかにまれであるか。そして、人を信頼するという「発明」がいかに人間社会をいかに「進化」させたかわかりやすく書いてある。

殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?―― ヒトの進化からみた経済学

殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?―― ヒトの進化からみた経済学

徳の起源―他人をおもいやる遺伝子

徳の起源―他人をおもいやる遺伝子

繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史

繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史

信頼こそが現代の社会の基本であるとデネット先生も論じておられる。

政治家、裁判官、銀行家、産業人、ジャーナリスト、教授──われわれの社会のリーダーたちは、実はみんなの期待よりもずっと、そこらの一般ドライバーに近いのだ。仕組み全体のなかで、自分の領域だけをどうにかしようと、卑近な活動しかしておらず、システム全体が依存している複雑性にはまったく無頓着。でも、彼らがそういう楽観主義的な近視眼状態にあるのは、システムの嘆かわしい矯正すべき欠陥なんかじゃない、とポール・シーブライトは論じる。それはむしろ社会を動かす力だ。あらゆる面でわれわれの生活を形成する社会という構築物の建物は、その構造がしっかりしていて、だれもそれを気にかけなくて良いという近視眼的な信頼に依存しているのだ。

P・シーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』 | トピックス : みすず書房

ただ、原題の"THE COMPANY OF STRANGERS : A Natural History of Economic Life "がなんぜ「殺人ザル・・・」になっちゃうんだろう?「他人同士(strangers)がいかに協力する(company)ようになったか」が人類繁栄の基盤だという話しなのだから、原題を生かしたタイトルにすればよかったじゃないかなって。

本書の主張は著者、シーブライト自身の「改訂版への序」の次の箇所に言い尽くされている。

最後に、本書は人間心理の進化的な起源を検討するものの、一般的に言われる進化心理学の本ではない。(中略)ほとんどの社会的霊長類は、グループ内部では高度な協力関係を持ちつつ、グループ間では熾烈な競争を繰り広げるし、また最強のグループに属する特権のために個体間でも競争が行われる。(中略)われらが老いたる霊長類の脳が、他にどんな新しい芸を学習できるかというのは、現代の心理学研究がいまだに取り組んでいる謎の一つなのだ。

「徳の起源」でも、「友と敵」という問題、人の協力関係のかたまりとしての国家から、他の国を侵略することで繁栄を築こうとする帝国に変わってしまうかという問題が扱われていた。ある意味、帝国とは国単位でのフリーライダーなのだろう。「友と敵」というフレームワークは、「殺人ザル」の時代から変わらない。しかし、そうでない道は存在する・・・。とまでは、どうもシーブライト先生はおっしゃっていないようだ。

これからじっくりと読もう。

ちなみに、本日は本ブログの10周年記念日だ。私のブログ人生は元々ココログで始まった。Amazonでの書評のまとめのエントリーが最初だ。それから10年というこの一月あまり良書にめぐりあえ続けていることに、ご関係のみなさまに深く感謝したい。

はてなダイアリーには2004年4月に移り住んできた。それから、しばらくの間はココログはてなをいったりきたり。

いまは、ひいひいいいながらはてなダイアリーは毎日続けている。ウェブへのアクセスが難しい日もあるが、そういう日は頭の中で書いておいて、キーボードの前に坐れる時間のある日に数日まとめて書いている。近しい知人が「十年日記」を欠かさず書いているいるので、それに対抗して(笑)個人的に祝いの日としたい。