作業仮説として会社はなにかを考えてみたい。会社とは何か、という問いはそのまま会社の原理原則とはなにか、会社をマネジメントする行動とはなにかである問いとなる。
目次
規模の経済と管理スパン
会社の付加価値の合計が、[1人の能力×社員数]にしかならないなら、会社組織を作る意味がない。
[(1人の能力+プラスアルファ)^社員数 × 社員数]*1にならないと。相乗効果を生み出すのが会社組織の存在意義。相乗効果をうまく出すには、規模の経済が必要。規模が大きくなるとほんの小さな工夫が組織全体の生産性を高めるとか、総務をアウトソースしても採算が取れるとか、共通化した事柄を専門部署にして生産性をあげるとかできるようになる。なにより理念を強く持てるようになる。一人は弱い。
ただし、これがマイナスアルファになってんじゃねえという組織が結構ある。組織が大きくなるとコミュニケーションコストが莫大になることがある。某組織のテレビ会議に出たことがあるが、数十人の時間を数時間拘束するよりも、数人で決めて議事録まわして、異論があれば調整する方がはるかに生産性が高い。
リーダーシップと兵隊根性
やせ我慢と弱音といってもいいかもしれない。弱音、悪口を容認する組織は弱い。みんながやせ我慢しているくらいの組織の方が強くなれる。
会社のヤンエグ*2になった時、風通しのよい会社がベストとおもっていた。しかし、同僚の弱音ばかり聞いていたのでは組織は強くならないことに途中で気づいた。組織はやっぱり戦う集団でなければ進歩発展していかない。やせ我慢でも、強がりでも、こうありたい組織理念、「こういう仕事が理想だ!」というスタイル、かっこいい組織人でありたいというイメージが共有できていることが大切だったりする。
一人独裁と民主主義
これと似た話だが、会社は独裁でいいと想う。よほどの大会社はいざしらず、そこそこの規模まで会社は社長で決まる。社長が自分の意思を徹底的に押し通せる体制にしておくことは大切。資本政策しかり、会社組織デザインしかり。
中小企業だとこれに親族対策があったりする。正直、私がいまの会社に入って最初にやったのは創業一族の親族を退職させることと、親族の株式を買い取ることだった。
もう一方で、自分の声がリーダーに届いているという実感は必要。LEADERの最初のLはListenのLだというのは本当。
L LISTEN 積極的に聴く
めざすべきところ - HPO機密日誌
E EXPLAIN 相手が納得するまで説明する
A ASSIST 適切な手助けをする
D DISCUSS 理解のための討論をする
E EVALUATE 公平な評価をする
R RESPONSIBILITY 最終的な責任を自分が持つ
そういう意味では社員持株会とか会社の中の民主主義的な要素として有効だと想うのだが、いまいち生かせていない。
三方よしと顧客満足
「お客様は神様です」は本当。だけど、会社組織の存続が顧客への最大のサービスというのも本当。そして、間違いなく会社は地域で必要とされていないと存続があやうい。
ということで、顧客と会社(社員)と地域(協力会社)の三方よしのバランスが大切。どれかひとつが肥大しすぎる、あるいは考慮が浅すぎると会社は存在していかない。
社員の成長と目先の利益
利益はあげつづけなければならない。どこかの経済学者がいうように会社の目的は利益をあげること。一方、会社の本当の力とはそこで働く人を成長しつづけられる場であること。前述の組織の相乗効果の「プラスアルファ」をふやせること。組織をつくる本質だといってもいい。
資格をとることを私は若い頃相当にばかにしていた。ようやく最近、社会人になって個人の業務遂行能力を成長させるのに、現場と資格取得の勉強の両面が大切だと知った。人間性が問われるのは、一定のステージに立ってから。
- 作者: ダニエル・ゴールマン,土屋京子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/09/18
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 150回
- この商品を含むブログ (67件) を見る
本業と多角化
会社組織はひとつの事業でのブランド化する。なにでもうけるかに最適化している。つまりは、ごく少数を除いて本業以外で成功するのは大変難しい。それでもポラロイドはつぶれ、富士フイルムは残った。このバランスは私には難しい。根拠地、地域が大切だということは感じる。
保守と革新
会社は保守的であるべきだと。守旧といわれかねないが、会社は会社の慣性の力をもっている。できるだけ、上からがみがみいうとか、方針を押し付けることは最小にした方がスムーズに動く。ここぞという時だけ、革新をする。しかも、スピード感と断固たる決意を持って。この革新の時のためにこそ、前述の一人独裁がとても大事になる。
悪口と建設的批判
他部門の悪口は厳しく戒めるべき。悪口は自分に還ってくるし、円滑たるべき組織のコミュニケーションを阻害する。なにより悪口をいいあうことで「友と敵」的な変な宥和を産む。そして、兵隊根性を産む。いずれも、強い組織を作るじゃまになる。
批判があるなら公の場で正々堂々というべき。以前、鬼軍曹のような課長がいた。部下には徹底的に他部門の悪口をいうなと叱っていた。ほんとうに真っ赤になって鬼のようにしかっていた。ある時、全社員が集まるミーティングがあり、恒例により最後に「なにか質問、意見がありますか?」と聞いたら立ち上がって、堂々と社内でまかりとおっている悪習を批判した。それを許す幹部も批判した。勇気のある行動であり、手本とすべき行動であると私は思う。
べき分布と正規分布
企業の扱うケースって一歩引いてみるとべき分布っぽいのが多い。学問的にどうかって検証はしていない。考え方として、世の中のリスクやら、取引先との取引の量やらは、べき分布すると考えたほうがいい。べき分布すると考えると、ABC分析が有効な場面が増える。
取引先との関係を例に取ろう。取引先をまわるにも大きいところ数件をまわるだけで、取引額の大半をカバーすることが出来る。一方、べき分布のテールのところからあらたな取引先が成長してきてくれるので、余裕があれば丹念にまわっておつきあいを深める。
社員の成長も同じ。通常の場面では、圧倒的に幹部クラスを前面に出す。出すしかない。それでも、テールのところにいる次の幹部を育てる努力を惜しまないことが大事。
以上、山本七平の「近思録の九徳」を意識して書いてみた。会社のなんたるかとは、九徳が示すように矛盾した要素をいかに矛盾とさせないリーダーのあり方そのものだと私は思う。