ようやく「組織戦略の考え方」を読み終えた。
- 作者: 沼上幹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/03
- メディア: 新書
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後半では、権力の源泉を分析し、組織を腐らせていく「キツネ」の存在を指摘した第7章がとても興味深かった。「キツネ」とは、組織の中で権力者と普通の人々との間をとりもつメッセンジャーの権力のことを言う。
キツネの権力は、(中略)奇妙なやり方でどんどん大きいくすることができるという厄介な性質を持っている。誰も直接見たことのないトラが実際以上に強く凶暴だというイメージをでっちあげれば良いのだ。
「友と敵理論」そのものであり、安冨歩先生のハラスメント概念に近しいものを感じる。
私自身も何人かの組織内タフネゴシエーターの末路を見てきた。辣腕の「営業マン」たちだ。彼らは、外部に対して使った強硬な方法を、どうしてもそのまま組織内で使いがちだ。このときにどうしても「キツネ」戦略が混じってしまう。いわく、「この顧客を逃すと、今後の当社の受注は厳しい。」いわく、「この法人を起こらすとあとが怖い。」こうした行動が組織をまた腐敗させる原因ともなっている。
もうひとつ面白かったのが、組織論においても「山火事は消してはいけない」という法則だ。
ここまでの議論を読むと、組織疲労の原因は厄介者やキツネであり、そういった人がいなくなれば組織は健全になるはず、と素朴に思い込む人がいるのではないかと心配になる。燃えるもののないところに火がつかないように、それが暗躍できる素地のないところにキツネや厄介者は生まれてこない。実は、厄介者が権力を発揮できるか否かは、「大人しい優等生」たちが対決を恐れて沈黙を守り続けるかにかかっており、キツネが権力を持つのも「怖い専務」に直接会いに行く勇気を持たない「大人しい優等生」が多数派だからである。
組織は常に野武士の集団でなければならない。