川原泉の作品がすばらしいのは、そこにほのぼのとした無償の愛があるからだ。夜中にパセリをつみに行くのも、白牛の男と逃げるのも、葡萄の精と子どもを救うのも、相手を支配したいがためではない。川原泉は、少女漫画の文法に従いながらも、相手を燃やしつくしかねない情熱的な恋を描くのではなく、女子高生があこがれの相手を想い、相手になにかしてあげたいとほんわかと願うような恋を描く。
- 作者: 川原泉
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 1995/09/01
- メディア: 文庫
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リアルの世界は、支配しようとする意思でいっぱいだ。「愛している」といいながら、自分の意思を相手に無理やりに通すことを「暴力」と呼びたい。愛だと口ではいいながら、愛の名のもとに相手を支配することは暴力意外のなにものでもない。安冨歩先生がハラスメントと呼んだのは、愛の形をとった支配しようとする意思といえる。
ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛 (光文社新書)
- 作者: 安冨歩,本條晴一郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/04/17
- メディア: 新書
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相手を支配する愛は、相手を完全に支配できなかったとときに強烈な嫉妬心を生む。相手を支配するのを邪魔する者に対して抱く感情が嫉妬心の本質だから。
どんなに高価なものでも、どんなに魅力的な相手でも手に入れてしまえば、ショーウィンドウに飾ってあって、「欲しいなぁ」とつぶやいていた時のあこがれはよみがえらない。ショッピングの喜びも、手に入れるまででしかない。
相手を自分の思いのままにすることは、相手の心と意思を失わせること。完全な支配は、相手の手足をぎりぎりと縛り付けてしまうことにほかならない。美しいとは思えても、意思も心もない人形を恋のお相手にできるだろうか?私にはできない。
もちろん、支配する愛のメカニズムを理解することと、相手を支配「しない」愛を体得することは別のことだ。ただ、少なくとも愛は相手を支配することに変成しかねないことを知っているだけで、自分に戒めることはできる。相手を人としてそのままをみつめ、ほんのりなにかのお役にたちたいと思えること。それが愛、ほんとうの愛。
■追記
人生の先輩がおっしゃることはやはり深いなぁ。
41. 嫉妬は密かな充実。
終風の忠告 - finalventの日記
先輩のご意見。
41. Envy is a waste of time. You already have all you need.
嫉妬は時間の無駄。あなたに必要なものはあなたがすでに持っている。
賢者の忠告 - finalventの日記
いや、だから、当然必要なものも持っているけど、必要でないものまで持っているわけで...。たとえば、劣等感とか、支配したくてたまらない愛とか、猛烈な欲望とか。
それだけでなく、まったく予想もしない人から、強烈な嫉妬を告白されてびっくりするようなことが、何度かあった。
ネットの炎上は人類進化の必然で、健やかなる新時代を拓く鍵かもしれない - 分裂勘違い君劇場
そうそう、わかるわかる。
■とらばさせてください。
そのままだったら、このどす黒い感情に気づかずに別れられたのにと思う。「嫉妬」はその憎しみの対象となる人を目にしてしまうと、とめどなく増殖していくもの。タールよりも重く不定形な「嫉妬」が、その人に向けてあふれだし、形をとり、自分自身をひきさく。自分で自分の「嫉妬」が抑えられない。その人のために自分のすべてが否定されてしまったのだと思わずにはいられない憎しみ。
だけど、自分の中から沸き上がってくる、
醜くて苦しい
でも、このエントリーに書いたように、「嫉妬」とは相手を支配する愛の結果でしかないのだと自分に言い聞かせている。私はあの人を支配したくて愛したのではない、あの人によく生きてほしいからあの人が大好きなのだ、一緒にいる時は私だけを見ていてくれれば満足だからなのだ...と。