「空襲警報」に収録された「マーブルアーチの風」。以前、翻訳されていたらしい。
毎年恒例の大会(カンファレンス)に参加するため、20年ぶりにロンドンを訪れたトムとキャスの夫妻。ロンドン地下鉄道をこよなく愛するトムは、旧友との再会を楽しみに地下鉄で大会会場へと向かうが、駅の構内で突然の爆風に襲われる。爆弾テロか毒ガスかと瞬間的に思うが、風は一瞬にしてやんでしまう。どうやら周囲の誰もこの風を感じなかったらしい。
マーブル・アーチの風 (プラチナ・ファンタジイ) | コニー・ウィリス, 松尾 たいこ, 大森 望 | 本-通販 | Amazon.co.jp
- 作者: コニー・ウィリス,松尾たいこ,大森望
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: 文庫
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夫婦の危機、人生の危機というのは確かにある。それを感じられるかどうかだけ。地下鉄の風には、人々の絶望や、不幸、苦しみが堆積しているという。もちろん、SFならではの設定だが、なんとはなしに分かる。アンダーグラウンド、ロンドンの地下鉄に最後に乗ったのはいつだったか。確かに、そんな雰囲気があったように記憶する。
本作の中に、妻の不倫を突然報されるシーンがある。その時の、足下から砂が崩れ落ちていくような感覚が共感できる。地下鉄は、人々の昏い思いを吸い込んでいく。