わかりにくいので、昨日のエントリーの後半を別エントリーにする。
たまたま読んでいたデイヴィッド・ブリンの「ガイア」に引用されたマオリの神話を引用して終わりたい。これはオルフェウスの神話以上にイザナキの黄泉の国行きと類似点があるように想われる。ウェブでオリジナルを探したのだが、見つからなかった。
むかしむかし、大いなる英雄ランギウラは、美しい妻ヒネマラマを失った。ヒネマラマは死に、その魂は黄泉の国ラロヘンガへ下った。
ランギウラは悲嘆にくれ、亡き妻を追って地の底に潜り、テ・アオマーラマ、つまり光の世界へ連れ戻すと宣言した。
つねに忠実な友、カエオとともに、ランギウラはラロヘンガの入り口をまもる渦巻きのところへやってきた。ランギウラとカエオは地獄の口に飛び込み、マナタの鼓動が周囲をゆるがす深みへと潜った。その圧倒的な力にさからって、ふたりは泳ぎに泳ぎ、とうとう反対側の岸にたどりついた。そこに、ランギウラの美しい妻の魂が待っていた。
どうも翻訳されたマオリ神話の神の名前が神話学と一致しない。どこかに混乱がある。
- ランギウラ →
マオリの開闢神話に見える大空の神。「宏大な大空」といった意味。世界はテ・コレ(無)から始まり、それからテ・ポ(夜)が来て、ランギ・ヌイを生んだとされる。彼は大地(パパ・ツ・ア・ヌク)と共に棲み、この二人が結婚して陸地が作られたという。軍神「ツ・マタウェンガ」、万物神「タネ・マフタ」、嵐と風の神「タフィリ・マテア」、耕作植物の神「ロンゴ・マ・タネ」、海神「タンガロア・ファイ・アリキ」、野生植物の神「ハウミア・チケチケ」を生んだのは彼等で、この六柱神はマオリ神話の万物の創造に寄与する。
ランギ・ヌイ(Ra-ngi nui) - 神魔精妖名辞典
- ヒネマラマ →
マオリ神話において、ランギ・ヌイと結婚する大地をつかさどる女神。「はるか彼方まで広がる大地」という意味がある。六柱神に加えて多くの子供を作った。ランギ・ヌイがパパ・ツ・ア・ヌクの上に横たわっている為、長い間大空と大地の間からはどんな光も差し込んでこなかったが、六柱神はこの両神を引き離して大地に光をもたらした。
パパ・ツ・ア・ヌク(Papa tu a nuku) - 神魔精妖名辞典
ランギ・ヌイの子供のタネの娘のヒネ・ティタマの物語とすると、更に物語りまで違う。うーん、デヴィッド・ブリンのリサーチのいいかげんさを見た想い。
このタネの神話の日本語による紹介には相当に混乱がありそう。