ゲイリー C. K. ホァン国際ロータリー会長の任期が始まった。ホァン会長のテーマは、「LIGHT UP ROTARY」と発表されている。
「ロータリーに輝きを」 ホァン氏が呼びかける | My Rotary
これは、孔子の「与其抱怨 不如改変」からとったのだとホァン会長はおっしゃっている。これは、「ただ座って暗闇を呪うよりも、ろうそくをともした方がいい」という意味だと。この言葉は、私の記憶の中では論語の中にない。Googleで調べてみても、中国語のサイトがいくつかでてくるだけ。後で調べてみよう。いずれにせよ、ホァン会長はロータリアンに対して孔子の実践の姿から、行動を強く呼びかけている。東洋の伝統から、西欧の道徳実践の粋であるロータリーの伝統に切り込んでいるように私には見える。
ホァン会長の言葉はこの後、こう続く。
ロータリーの奉仕において、私はよく孔子の教えを指針とします。孔子は、私にとって「元祖ロータリアン」だと言ってもいいかもしれません。ポール・ハリス*1が誕生する2,000年以上前、孔子はこう述べています:
まず自分の行いを正しくし、次に家庭を整え、
次に国家を治めてこそ、天下が平和となる。
この「まず自分の行いを正しくし」とはいうまでもなく、「修身斉家治国平天下」のことを言っている。「修身」とは中国の古典中の古典、「大学」の一節として一般に良く知られている。そして、私の父が私の社長就任の時に与えてくれた言葉でもある。
修身斉家治国平天下 Ethics, Society and Myself: HPO:個人的な意見 ココログ版
「修身斉家治国平天下」は、「格物至知意誠心正」と合わせて「大学の八條目」という。一般には「修身斉家治国平天下」だが、父が私に与えてくれた書は逆に書いてある。「身修ってのち家斉のう。家斉のいてのち国治まる。国治まってのち天下平らかなり」と読み下す。これは、「大学」の「八條目」について書いてある節で、前段と後段で思惟と実践を述べていることに由来する。少し長いが引用する。
古之欲明明徳於天下者、先治其國。
欲治其國者、先齊其家。
欲齊其家者、先脩其身。
欲脩其身者、先正其心。
欲正其心者、先誠其意。
欲誠其意者、先致其知。
致知在格物。古いにしえの明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、まずその国を治む。
その国を治めんと欲する者は、まずその家を斉ととのう。
その家を斉ととのえんと欲する者は、まずその身を修む。
その身を修めんと欲する者は、まずその心を正しくす。
その心を正しくせんと欲する者は、まずその意を誠まことにす。
その意を誠にせんと欲する者は、まずその知を致す。
知を致すは物に格いたるに在り。物格而后知至。
知至而后意誠。
意誠而后心正。
心正而后身脩。
身脩而后家齊。
家齊而后國治。
國治而后天下平。大学:経一章 - Web漢文大系物格いたってのち知至る。
知至ってのち意誠なり。
意誠にしてのち心正し。
心正しくしてのち身修まる。
身修ってのち家斉ととのう。
家斉ととのいてのち国治まる。
国治まってのち天下平らかなり。
結論からいうと、前段は「明徳を明らかにせんと欲する者は、先ず其の国を治む」というように、「何何せんと欲するものは」という「願望」の上からこのことを記したものであって、いうなれば願望追求の思惟の世界のことであります。それに対して後段は、「物格りて而る後に知至る」というように、すでに実践を経て、そのことを体得し、把握した後のこと、即ち体得の世界の消息を記したものであると、私は見たいのであります。
こうして父の私に対する想いと、ホァン会長の世界のロータリアンに対する想いが私の中で重なる。ここにくるまでに十分に人格を陶冶し、修行を積んできたでああろうと。ここから先は、ますます実践に励みなさいと。そこにこそ天下平か、世界平和、発展繁栄に至る道があると。