HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「街」のつながりが歴史の基本

「文明ネットワークの世界史」を読み始める。めちゃめちゃ面白い。なぜこれまで読まなかったのか。

文明ネットワークの世界史

文明ネットワークの世界史

本書でいう「ネットワーク」の単位(ノード)は、「都市」だという。のっけから大胆な仮説ではじまる。

本書は、「都市」と「都市を支えるネットワーク」の変容とその変化に伴うシステムの組み換えが、「世界史」を作り上げてきたとする仮説(「ネットワーク論」)を基礎にして、文明の形成からグローバリゼーションが進む現代に到る「世界史」を一貫したプロセスで描き出すことを試みています。

その枠組みの柱になるのが、多くのサービスを創造し、「世界史」を牽引してきた「都市」です。住民の大多数が食料を生産せず、農耕集落(地方)にその多くを依存する都市は、可視的な「都市本体」の外に道路網、水路網、複雑な人的結合などの「ネットワーク」により農耕集落(地方)と結び付きます。多様なサービスと食料を交換するための「ネットワーク」が必要だったのです。

今日、あるひなびた街に仕事でいった。仕事のお相手とお話をする中で、以前川を使った廻船の乗り換えとして栄えていたころの話になった。市場があり、周辺の多くの村々から人が集まり、芸者さんはいるは、映画館もふたつもあるはで栄えていたのだそうだ。それが、トラック輸送が主になることから没落がはじまり、いまではもろに商店街もシャッター通りとなってしまった。当時は、村であった周辺の町が逆に電車のターミナルとなり、政令指定都市に匹敵するほどの大都市になってしまったのだという。

本書によるとトインビーが「社会の構成要素は人間の存在ではなく、人間の間の諸関係なのである」と定義しているそうだ。つまりには、ノードの価値とはネットワーク上の位置なのだ。

ネットワークにおいて、あるノードが果たす役割は、そのノードと同じ瞬間にリンクしている他の全てのノードとの関係によって、またそれによってのみ決定される。ノードは、他のノードとの関係においてのみある役割を持つのであって、単独で存在するノードには意味がない。

対話、ネットワーク、そしてマッハの原理 Mach!: HPO:個人的な意見 ココログ版

街という「都市」は、「ネットワーク」上の位置によって価値が変わる。これはいかんともしようがない。街の猥雑さも、人と人とのつながりも、ネットワーク上の価値により位置づけられる。なんとも身近な街への思いが、世界史まで一気につながる総代な構想だ。