「男の何が間違っているというの?」
テナーは注意深く聞いた。
モスは、声を落とし、注意しながら、モスは応えた。
「そうねぇ、わたしにはわからないよ。そりゃ考えてみたさ。男について何度も考えてみたさ。私に言えるのはね、こういうことだね。男の力はその肌にあるんだよ。わかるかい?そう、殻に覆われた胡桃みたいなもんだ。」
[中略]
「わたしゃ、闇に戻るのさ。わたくしが月だった前にいた闇にね。誰がわかるというのだね、誰がわかるというんだね、誰が言えるというんだね、わたしがなんであるかを、女がなんであるかを、力のある女を、女の力を!それは、島の根っこより深く、創造の時よりも、月よりも古い。いったい誰が闇に聞くというのだい。誰が闇のその名を聞くというのだい。」
老女は、身体をゆすり、呪文をぶつぶつ唱え我を忘れていた。しかし、テナーは背筋を伸ばしてすわり、親指で茎のまんなかを割りつづけてた。
「私は聞くわ。」
彼女は言った。そして、またひとつ茎を割った。
「私は十分に闇の中で暮らしたわ。」
彼女は言った。

Tehanu: The Earthsea Cycle (Earthsea#4)
- 作者: Ursula K. Le Guin
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