先日、マーケティングのセミナーへ出席したとき、経験則として「マーケットの規模が大きくなる局面でも、小さくなる局面でもマーケットシェアの大きな会社はより大きなマーケットシェアを占めることができる。」と講師の先生がおっしゃっていた。これをスケールフリーネットワークにおけるべき乗の法則から検証しようという無謀な試みが本稿の目的である。
まず、復習として数学的に解析された3つのネットワークから見ていこう。
大前提としてノードの単位をどうとるかだが、仮説的に人をノードとしてとらえるのなら、社員とお客様、関係会社の社員までをひとつのノードとしておく。また、会社の内外を含めたマーケットがSFネットであるという仮定を置く。これは正確に検証可能であると感じる。リンクが何であるか?この定義により結果が変わってくる。マーケティング的には、会社のブランド、商品のブランドに対する顧客ローヤリティーをとった方がいいのかもしれない。今回はシェアを問題とするので、リンクは恒常的な取引関係として定義すべきであろう。
ここで思考実験を行う。
初期条件
- A社:社員3名
- B社:社員名
ここにSFネットの定義にしたがって、顧客が1人ずつ市場に加わっていくと考える。また、リンクの志向性(適応度)は多くのリンクを獲得したノードほど新しいリンクを得るものとする。リンクは簡単にするために2次リンクまでとする。リンクのレイヤーを多くしてしまうとマルチ・レベル・マーケティング(MLM)になってしまうだろう。あるいは、数次のレイヤーにわたるリンクを獲得できることがMLMの強さなのかもしれない。これがマーケティングであれば、口コミの威力ということになる。
A社、B社の2次リンクまでのリンク獲得数を全体のリンクで割ったものをシェアと定義する。以下、10人の顧客を獲得するまでのシュミレーションを行う。
→ 志向性があり、ノードにつながるリンクの数が増えれば増えるほど有利になっていくというルールなので、強いものが強くなるのは当然。
今度は逆に、ランダムにノードが消失していくことを考える。
→ ノードが加わりリンクが増える時は、志向性が効くが消失するときはランダムに消える。ゆえに、シェアアップしていく。
先ほど触れたリンクの深さに制限の無いMLMのような場合、あるいはマーケティングにおける口コミの効果のような場合、ほぼ通常のSFネットといって間違いないだろう。ただし、ハブにあたる部分がA社、B社と設定されているため、どちらかのネットの系統に色分けされるという違いがある。この「色」が、企業のシェアということになる。
→ 思考実験
私にとってSFネット、べき乗の法則は、物理学が巨視的な法則から分子の動き、性質に基づく精緻さを獲得した時のように、初めて経営学がマーケティングから、経営管理、組織論などを検証するツールを得たように感じる。これを使わない手はない。