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HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「白蓮れんれん」読了

この物語が素敵に輝いてくるのは、柳原白蓮こと伊藤燁子と、宮崎龍介の文通がはじまってから。本書のこの文通の文章は二人が死ぬまで保存してきた実際の手紙から取られているらしい。

白蓮れんれん (集英社文庫)

白蓮れんれん (集英社文庫)

白蓮れんれん (集英社文庫)

白蓮れんれん (集英社文庫)

よくここまで小説の形で、実際の二人の文章を生かせたなと。大正時代の実在の二人の手紙の文章と、現代の林真理子の小説の文章を、ここまで一体にできたのは、林真理子の綿密な調査と白蓮への共感なのだろう。男にはかけない。

明治から大正にかけての女性達の悲喜こもごも、もつれる感情のたかまり、心理内面の描写に実に打たれる。逆に言えば、不倫だの、離婚だのが今日のように普通のことに受け止められるようになったのは、白蓮たちがいたからだと。当時は本当に命をかけて、恋いにかけたのだという切実さがつたわる。また、恋いに生きることを決めた白蓮を周囲の伝統的価値に生きる女性たちの目から冷静に描いてもいる。

それにしても、仮に途中には筆舌に尽くしがたいほどの労苦があったとしても、不倫の恋で幸せになれるケースは極めて希だと私は想う。

林真理子ならではの小説だ。