HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

渋滞学と道徳

こんなにもシンプルに、永年求めてきてテーマの答えが与えられるとは思わなかった。

西成氏の渋滞解消への強い思いは、さまざまな業界に希望の光を与えているのではないだろうかと思う。「流れる」というキーワードから渋滞解消の道を開き、渋滞の本質は人間の内的な要因であることを突き止めた。
 私たちは車間40メートル、2秒後に前車の通過地点を通過するように意識することから、自分のためではなく、全体の流れを止めて渋滞を起こしてしまわないような内的要因を意識してみよう。その成果を実感すれば、あらゆる渋滞への意識が、自己中心から起こっていることを痛切に感じることになるだろう。その気づきが、社会に少し良いことをしようという意識につながり、より良い社会づくりへと貢献することができるのではないだろうか。
 西成氏の渋滞解消法は、より良く生きるための人生哲学にも通じるのではないかと感じた人は少なくないだろう。

【第108期講座】2012年10月-2013年03月 : 西成 活裕の講座リポート - NPO法人 ザ・シチズンズ・カレッジ

私は長いこと、伝統的な道徳、人の生き様の智恵に、認知科学、脳科学の視点から根拠を与えられないか考えてきた。

自分の腹に、生き物というのは必ずなんらかの「沢」に棲むのだという確信が刻み付けられた。もっといえば、自分のイメージでは、「麗しい谷」のような気がする。沢であっても、谷であっても、流れる谷川の真ん中、川の岸、川岸の土の中と、それぞれ棲む生き物が違うように、棲み分け、特化分化することにより進化が生じるのだと言う今西理論に触れた時に、自然とこの「麗しい澤」という言葉が浮かんだ。いや、今西理論が自分の中では自分の体験のように感じられた。

麗しい澤: HPO:個人的な意見 ココログ版

群体するアリのような存在に創発、自我を感じた。西成先生は、「アリは渋滞しない」とおっしゃっていた。ホッケは、自分だけのためでなく全体のために渦を起こすと。

この前の日曜日に、NHKの特集番組のホッケの話を見た。

私とはホッケ柱なのか? - HPO機密日誌

確かにすべては流れなのだという予感はあった。

たとえば、生物の代謝は体重の3/4乗に比例するのだそうだ。それは、動物の血管のネットワークがフラクタルだからなのだそうだ。

いま気がついたのだが、この絵を下に向ければ木の根に見えるし、上に向ければ木の枝のようにも川の流れのようにも見える。


桃組とべき乗則コラボ勉強会のはじまり、はじまり - HPO機密日誌

リーマンショックの時のヘッジファンドの失敗も、まさに「渋滞学」で説明できる。

そして、この可能性の樹木が市場という森に密生えている。互いに埋めるべき未来という枝に向かって。繁茂しすぎると例のリーマンショックのようになる。未来の可能性が他の未来の可能性を打ち消すのだと。出るに出られない状態を作るのだと。

オプション取引とは可能性のネットワーク - HPO機密日誌

この時の状態は、まさに西成先生のおっしゃる「過冷却」の状態だったのだと。ほんのちょっとしたショックで、凍結=創発を起こす内部状態をもっていたと。過密なネットワークになってしまっていたと。

しかし、すべてが「車間距離を取る」、「科学的ゆとり」、「ホッケ柱」に集約されるとは思ってもみなかった。