「大和」に出てきた。
人間を檻の中に入れれば囚人だ。原始的感情からいうならば、まことに憎むべきで、殺してしまえばよいものを、それにも飯を食べさせてやる、即ち囚の下に皿という字をつける、水も飲ませてやる、即ち氵偏をつける、そうすると溫(温)という字になる(これは一説)。溫という字はこうして書くのだとやたらに教えても面白くない。同じ一字を教えるにも、囚字の下の皿という字は囚人に飯を食わせるという文字、何故に囚人に飯を食わせ、茶を飲ませるか、これを考えさせてゆけば、犯罪とは何ぞや、刑罰とは何ぞやという、刑法学の根本問題にも触れさせられるのである。
漢字一字に込められた東洋の智恵は深い。