「貴婦人と一角獣」にガンダムUCの鍵は秘められている。語るまでもない当たり前のことなのだが、小説を読まずにアニメ版だけでUCを楽しむことを決めた私にとって、とても楽しい謎のまま残っている。
謎は、ここから始まる。「可能性の獣」、リルケの晩年の詩、「オルフォイスへのソネット」。
おゝ、これは現実には存在せぬ獣。
ひとびとはこれを知らず、それでもやはり――そのさまよう姿、その歩みぶり、その頸を、そのしずかな瞳のかがやきすらを愛した。
たしかに存在はしなかった。しかし人々はこれを愛したから、純粋の獣が生まれた。
人々はいつも余白を残しておいた。そしてその透明な、取っておかれた空間で獣は軽やかに首をあげ、そしてほとんど存在する必要さえもなかった。
人々は穀物では養わず、いつも、存在の可能性だけでこれを育てた。
可能性こそ獣に大いに力をあたえ、ために獣の額から角が生まれた。ひとふりの角が。
ひとりの処女(おとめ)のかたわらに、それはしろじろとよりそった――。 そして銀(しろがね)の鏡のなかに、そして処女のうちに、まことの存在を得たのだ。
可能性の獣 @ ニコニコ大百科
リルケはフランスに滞在していた頃、「貴婦人と一角獣」に触れていたそうだ。
貴婦人と一角獣 - Wikipedia
「貴婦人と一角獣」は、ル・ヴィスト家のアントワーヌ二世の注文により製作された。ヴィスト、そう、ユニコーンを作ったバナージの父、カーディアスのヴィスト家だ。バナージが最初にユニコーンガンダムに乗った時につぶやく、「私のたった一つの望み」とは、六つのタペストリーで構成される「貴婦人と一角獣」の最後の一枚に由来する。「A Mon Seul Desir I」と最後のタペストリーのテントにある。六連作は、「触覚・味覚・嗅覚・聴覚・視覚」の5つの感覚と、最後の「心」を表すといわれる、最後の一枚、「私のたった一つの望み」とは、神への愛なのか、配偶者への愛なのか。テントにあしらわれたAとIは、アントワーヌ二世とその妻ジャクリーヌのイニシャルであるという。「私のたった一つの望み」、「心」とは、愛であり、五感を超えた「直観」をあらわすという。愛と直観、これはまさにララァが象徴するニュータイプそのものではないだろうか?
タペストリーには、貴婦人とユニコーンとライオンが必ず描かれている。六連絡の中で、貴婦人とユニコーンとライオンは、さまざまに意匠を変えて登場する。タペストリーの作られた1500年代前後には、ユニコーン狩りが絵画のテーマとして好まれたという。処女とユニコーンとは、貞淑さ、清純さ、そして、愛を象徴するのだという。この清純さ、愛を象徴する貴婦人はミネバ=オードリーなのか?ライオンとは、黒いガンダム=バンシィなのか?それとも、シャアの再来であるフル=フロンタルなのか?そして、「私のたった一つの望み」では、貴婦人は箱に自分の大切な装身具をしまおうとしている、あるいは、取りだそうとしている。これこそが、UCの展開そのものであり、「ラプラスの箱」が示すものだ。人の可能性、人の未来、変わっていく人、変わらない争い、UCの中でバナージがユニコーンで戦っていく中で、次第にテーマが明らかになっていく。そして、最終話で「箱」に人の可能性という宝を封印するのか、そこから取り出すのかが明らかになるのだろう。
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