「鬼と人と」読了。
- 作者: 堺屋太一
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 1993/05
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ナポレオンに先駆けること200年あまり、農民兵ではなく銭で兵を集めたと信長が独白していた。繰り返し語るのは、兵制を改革した信長が事実上の「国民軍」を作ったのが成功の要因だと、著者が確信しているからではないだろうか?歴史、特に日本史は私の苦手な分野なので、考証などできない。秀吉や光秀など、出自も明確でないものを雇い、高い地位につけたというのは、中世の域を脱して、近代の考え方ではないだろうか。
いや、逆かな。日本の場合は、戦国時代において農民と武士との区別があまりなく、武田武士も、半農であったために、稲刈りの時期には戦争という出稼ぎから国へ戻らざるを得なかった。そこが信長の銭であつまた兵との差であったともいう。
- 作者: 黒田基樹
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また、「勝者がすべてを取る」ではないが、銭で図った力であるからこそ、ひとつひとつの成功が幾何級数的に次の成功へとつながっている。
確信はないが、家康でもなく、秀吉でもない、信長こそが日本の近代を開いたのだと思った。
境屋太一の想像ではあろうが、信長のこんな独白があった。
俺の考える「天下布武」の国では、まず第一の基に地と民があり、次にそれを束ね収める力、つまり「武」がある。そしてその「武」によってまとめ上げられた国に、畏き帝がおわすのだ。それでこそ、この国の力が唐にも天竺にも南蛮にも及び得る。(中略)
まして武士の棟梁などではない。朝廷の旧き権威に頼らず、帝の尊さを犯さず、自らの力で天下を治め自ら武威を四海に及ぼす「王」なのだ。俺が開く天下の仕置き(統治)の場は幕府などではない。上は朝廷から下は万民にまで自らの意思と責任とで治める政の府なのだ。