では、安売りしないためには、どうしたらよいのか?実に悩ましい形而下な問題だ。それでも、安売りしない仕事の仕方を身につけられるか否かに、「ブラックスワン」のタレブ氏のように形而上な問題を考える時間をたたっぷりもてるか否かがかかっている。
お金をかければできることは、いまの世の中だとどこまでも投資が集まる。だから、それは競争力にならない。昨日書いたように、コストをさげるのもどこまでもさがる。無料の先までさがっていく。これまた競争力にならない。しかも、Winner Takes Allな世界で生き残るのは一人だけ。そういう世界で生きるのは至難のわざだ。
だからこそ言いたい、安売りは商売じゃないと。
私は、競争の激しい世界で生きる気がしなかった。だから、都会をさけて、人がなかなかやりたがらず、またあまり儲からない、だからこそお客様が喜んでくれる仕事をしてきたつもりだ。この生き方は、うまくいってなんとか生きていける程度でしかない。下手をするとちょっと苦しくなる。だが、突然生きていけなくなるというほどのリスクではない。これはなかなか忍耐のいる生き方だった。
タレブ氏の通常の市場環境では少しずつ損をしつづけという忍耐強さにはちょっと似ている。だが、タレブ氏のように市場が非常にボラタイルになるときに大もうけすることは私にはできない。
- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛
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ま、そういう地味で忍耐の必要な生き方すら、いまの日本では社会と自分自身に対する信頼が失われていく中で、少々難しくなってきている。ネットワークが壊れていくというのはなるほどこういう状態なのかと自分を納得させている。
ちなみに、安売りしない大企業としてグーグルが商売上手だなと思うのは、AdWordsだ。もう何年くらいか使っている。このすべてが安くなっていく時代で、すべてが無料化していくネットの中で単価があがりつづけている。私が指定しているいくつかのキーワードは30円くらいから300円以上に上昇した。繰り返すがいまの時代に10倍に単価があがってそれでも買い続けなければいけないと思う商品があるだろうか?*1
*1:誰か品質スコアってやつをあげる方法を知っていたら教えてくれ!これに惑わされて使い続けているという側面は確かにあると自分自身で思う。