読了。もうなんというか、ブログで語りたかったことは、ここで言い尽くされている気がする。前半は、貨幣の生成と消滅の話だと私には読めたし、後半は「解体」という言葉をキーワードに「私的」であること、自己言及の無限階段について書かれているように想う。そして、なによりもカール・ポランニーとマイケル・ポランニーが兄弟だという事実がすさまじい。
- 作者: 吉本隆明,栗本慎一郎
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1985/06
- メディア: 文庫
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富安さんの貨幣の生成と消滅を示すシミュレーションは、ポラニー兄弟それぞれの研究をつなぐものであるかもしれない。あるいは吉本が理解したマルクスの貨幣論と栗本の考えを具現化するものと位置づけられるのかもしれない。栗本が外部、内部の交換から市場の形成までを語っているが、シミュレーションでは、「人は人がほしがるものをほしがる」という仮定と「交換には商人か貨幣かあるいは両方が必要」という仮定くらいで情報と商品が交換され、市場が形成される。
それにしても私にとっての現代思想の入り口とも言える20年以上前に出版された本書の問題意識から、未だに出られていないということがいささかショッキングだ。私はよほど不器用にできているのだろう。ま、不思議なのはあれ以上吉本隆明への興味が深まらなかったことか。栗本も、RCサクセションも、橋本治も、ポラニーも、山口昌男も、挫折はしても読もうとする努力くらいはしたのに。
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