HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

光る君の歎き

人はなぜ喪ってから初めてその大切さを思い知るのか。春になっても、夏になっても、秋になっても、冬になっても、ただ悲しい。

なき人をしのぶる宵の村雨に
  濡れてや来つる山ほととぎす


亡き人をしのぶ
今夜の雨にぬれて
死出の山からきたのか
この時鳥は・・・

ほととぎす君につてなむふるさとの
  花橘は今ぞさかりと


時鳥よ
亡き人に伝えておくれ
昔の住まいはいま
橘の花が盛りだと

つれづれとわが泣き暮らす夏の日を
  かごとがましき虫の声かな


夏の日を涙にくれてすごす
わたくしに誘われたかのように
蜩が鳴いている

夜を知る蛍を見ても悲しきは
  時ぞともなき思ひなりけり


蛍は夜だけ
恋の灯をともすが
私は夜昼となく
亡き人への思いを
燃やしている

大空をかよふ幻 夢にだに
  見えこぬ魂の行方たづねよ


大空を自在に飛ぶという
幻術士よ 夢にさえ現れてくれぬ
あの人の魂の行方をさがしておくれ

かきつめて見るもかひなし藻塩草
  おなじ雲居の煙とをなれ


かきあつめてみても
むなしいばかりの文は
あの人と同じ
空の煙となるがよい


あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)

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