HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「習慣の力」

少し前から読み始め、ココファームの素敵なテラスで読了した。これは確かに人生を変える本。

文字通り、習慣の力は大きい。以前は私ははてなブログのヘビーユーザーだった。2004年から数年前までは毎日ブログをアップしていた。いまは、それがツイッターに変り、時間さえあれば開いている。いずれもほとんど中毒症状だといえる状況。最盛期は、人と話している時も携帯でブログを書いていたし、いまは仕事の合間にツイッターを見ているのか、ツイッターの合間に仕事をしているのかくらい。Covid-19が仕事に影響するからという名目で自分でツイッター利用を肯定していた。

本書は、一旦できた習慣の力がいかに強いか、そして、その習慣の「中毒性」をなす「習慣」と「報酬」のサイクルの要素を変えることで人生も、組織も、そして社会すらも変えられることを様々な例を使って描いている。強い印象が残ったのは、アルコアの「安全第一」徹底による生産性工場と、公民権運動のローザ・パークスの話だ。

1980年代なかばのアルコアは、いくつかの経営上の失敗が相継ぎ株価が低迷。同社の取締役会は、経営立て直しの期待を込めて、オニールに次期CEOの白羽の矢を立てた。オニールはもともと官僚畑の出身で、ワシントン(連邦政府)で組織改革に関するいくつかの実績を残して頭角を現した後、その当時は野に下っていた。このオファーに当初はあまり乗り気でなかったオニールだが、いろいろ解決すべき課題をリストアップした上で結局オファーを受諾。そして「事故ゼロ」("zero injury")を目標に掲げ、社員の意識をそれだけに集中させることで、停滞していた大組織をすっかり生まれ変わらせたという。

企業変革のツボはどこにあるのか--アルコアから学び、フォクスコンを予測する - ZDNet Japan

オニール氏は徹頭徹尾、「安全第一」を語り続け、実践し続け、組織としての習慣として組み込み、会社の体質を一変させたという。日本企業でも、掃除の徹底、5Sの徹底により蘇った会社はたくさんある。組織の風土となるまで、社員の一人ひとりが「これが自分の組織の当たり前だ」と思うところまで習慣化することが本当の意味での組織の進化なのだと私は信じる。

私の組織ではこの数年ITリテラシーの向上に努めてきた。最初は半信半疑以下だった同僚も最近ではすっかりクラウドベースの仕事の仕方が当たり前になった。Covid-19ショックが来ても業務の進め方は微動だにしなかったように思う。

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そして、公民権運動。ちょうど「アンブレラアカデミー」にはまったのだがこのシーズン2にちょうど本書で描かれたような公民権運動と地域の草の根の人と人とのつながりの一旦が描かれていた。黒人による公民権の獲得運動は何度も起こっていたが、1955年12月に始まったこの動きはバス乗車に関する差別を受けたローザ・パークス夫人がアラバマ州モンゴメリーでは幅広い人間関係、まさにソーシャル・キャピタルを持っていた。そして、この「資本」が赴任したばかりの牧師、マーティン・ルーサー・キングJr.に火をつけたと。

ローザ逮捕の知らせが伝わると、モンゴメリーのデクスター街バプテスト教会で牧師に着任したばかりで当時26歳だったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアやラルフ・アバーナシー(Ralph Abernathy)牧師らが抗議運動に立ち上がり、モンゴメリーのすべての黒人にバス・ボイコット運動を呼びかけた。以前にも黒人が同様に逮捕されていたが素行の悪い者が多く、運動としては盛り上がらなかった。ローザの場合はまともな職業婦人であり、NAACP書記でもあったため関係者が迅速に動いたとされる。

(中略)

キング牧師はこの運動の勝利を契機として全米各地での公民権運動を指導し、非暴力直接行動と市民的不服従を掲げて1963年8月28日にワシントン大行進で25万人を集めた抗議集会を開催する。アメリカの黒人運動は最高潮に達し、1964年の公民権法成立につながった。

ローザ・パークス - Wikipedia

ちなみに、「アンブレラ・アカデミー2」では、1963年、公民権獲得前夜でも続く黒人差別の様子が描かれていた。

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パークス夫人の誰に対しても裏表のない「習慣の力」が米国社会を変えることになったといっても過言ではない。どなたがおっしゃったのか忘れてしまったが、まさに「礼儀正しさは最強の武器」なのだと思う。

オニール氏や、パークス夫人を見習って、そろそろCovid-19を言い訳にしてツイッターに耽溺する「習慣」を変えよう。