HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

5つのR:COVID-19マッキンゼーレポート

先日、マッキンザーのcovid19対策のレポートを教えていただいた。

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https://www.mckinsey.com/~/media/mckinsey/business%20functions/risk/our%20insights/covid%2019%20implications%20for%20business/covid%2019%20march%2025/covid-19-facts-and-insights-march-25-v3.ashx

※以下、断りがなければ同じレポートからの画像

総論から言えば、このレポートはcovid19の現状の分析から、各産業セクターへの影響予測、そして、ビジネス戦略立案のための「5つのR」へとつなげている。最終的には「テーラーメードな戦略立案が必要です」としっかり自社のコンサルティングにつなげているのがすごい。

いくつか、私に突き刺さったポイントを。

3月初旬の野村證券のレポートで各エリア別にGDPに対するインパクトが載せられていた。中国を除く各国は暦年の2020年はマイナス成長になるだろうと。それが、果たしてV字か、U字か、はたまたL字でなかなか復活しないのかが問題だとされていた。繰り返すが、それでも中国は6%程度の経済成長を成し遂げるであろうと、そして日本は欧米よりもマイナス幅が大きいだろうとされていた。

マッキンゼーのレポートでは新型コロナウィルスの性質と政府の取る対策の適切さでVか、Uか、Lかという分析をしていた。その上でのGDPインパクトを次のページのように予測している。世界全体で以前の水準に戻るのが2022年としている。やはり、スリーシーズンか。

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一定の平衡状態にたどり着くまで3シーズンかかったとおっしゃっていると私には読めた。

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スリーシーズンの根拠
1957年の米国インフルエンザから学ぶ(個人的メモ) - HPO機密日誌

各産業別への影響。横の幅は現在の各産業の時価総額、縦軸はその利回り(return)の落ち込み。一番左に位置し50%近い落ち込みとなるのは、商業航空産業。以下、石油ガス、旅客・旅行、保険、銀行、コングロマリット、不動産、自動車・組み立てと続く。右から、ということは「軽症」からは消費サービス、小売り、運輸・貿易、ハイテック、製薬、ヘルスケアとなっている。

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そこで、ビジネス戦略としてどうすべきか?マッキンゼーのレポートでは5つのRと「神経中枢の構築」(nerve center)を提唱している。

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5つのRとは、私のかなり勝手な解釈を含めて説明すれば以下のようになる。

Resolve :「決断」 労働力、顧客、取引先企業に対するCOVID-19がもたらす緊急課題を表明する。
Resilience:「弾力性」 短期間の現預金管理課題の表明、そしてより広い企業の「弾力性」の課題(レバレッジの解消等)。
Return:「復帰」 いかに速くもとの経営規模に復帰するか詳細な計画を作成(実施)する。
Reimagination:「再想像」 次の「社会標準」を再・想像する。断続的な変革(shift)はどのようなものか。組織の再創造の実施(implimentation)(アフターコロナを踏まえて事業構造を考える)。
Reform :「リノベーション」 規制、政府の役割などを含む自分の産業における新たな環境がどのように進化するか明確に予測する。

さすがマッキンゼーだなと思わせる各セクションの説明がつづく。私の下手な英訳より原文を読むことをお勧めする。しかし、各企業はこの「5つのR」を意識してこれからを行動していく必要があるだろう。

なお、このレポートによるとリモートワーク、事業所分断は生産性を大きく損なうと警告している。1つの事業所でやっていたことを6つの事業所に分割するだけで48%にまで生産性は「低下(drop)」するだろうと。コミュニケーションの複雑さから考えても、そりゃそうだろうと。あるいは、行動習慣から言っても自宅にいればもう脳が「休みたい」というようになっている。

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この先にはこの「5つのR」を進めるかの「中枢神経」メンバーの構築や、ダッシュボードのように状況把握をどうすべきか、非常に示唆に富むストーリーを展開されている。この短期間でここまでまとめてしまうことにマッキンゼー社の迫力を感じる。

正直、私はあまりの大企業志向にマッキンゼー社を評価してこなかったが認識を180度改めざるを得ない。

hpo.hatenablog.com


■追記

4月3日版が出されていて更に参考になる内容。

COVID-19 Briefing Materials Update April 3, 2020