HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「ビジネスマン、生涯の過し方」

先般、「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」を読み、父親から息子への無償の愛のあたたかさに感銘を受けた。日本での出版まもなく頃、最初に読んだ時は、本当に息子に譲るまでのドキュメンタリ的に書かれた「手紙」だと思った。先日読み直して、年齢がちょっと合わないと。

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ただし、調べてみるとその後、立派に息子の「キング・ジュニア」が父親の事業を継承したことを確かめ、本当に素晴らしいと感じた。実際に著者の生き様に迫りたいと想い、更に二冊を購入し、「生涯の過ごし方」を読了した。娘への手紙は少々ちゅうちょしていたが、これから読む。

改めて、ウォード氏の生き方に触れて素晴らしい実業家としての人生だなと感銘を受けた。たぶん、ちょうど「息子への手紙」を書いた時のウォード氏の年齢に私もなった。「ビジネスマンの一日」の章に描かれた職場での意思決定、人とのコミュニケーションなどよく分かる。「脱サラ物語」、「気まぐれな運命」に描かれた公認会計士を苦労して取得し、更に会社オーナーとしてスタートしていく姿にも大変共鳴した。会社経営者はまず数字に明るくなくてはならない。日常の「気まぐれ」のように見える事象にも数字で考えられなくてはならない。会計の知識、教養はそのためには絶対に必須だ。

「経済的保証」、「リスクを冒す」に書かれたように、更に経営者はリスクを取ることに積極的でなければならない。できれば、好きくらいのほうがいい。当然、そこには冷徹な計算が必須ではあるが、その上で(私の造語で)「リスクジャンキー」なくらいでちょうどいい。

「狼、悪天候、母なる自然、そして私」、「ブッシュパイロット」、「子供とともに成長しよう」に描かれるような、余暇を楽しみ、自然に親しみ、そこに家族を伴う余裕は私にはなかったことが残念だ。いまではもう子供たちもすっかり大人になってしまった。子供達と正面から向き合える時間は本当は短いのに私は仕事にかまけて家族との時間、余暇の積極的な過し方を選択することができなかった。これは反省。

一番読みたかったどのように「30通」を書いたかは「著述家の誕生」に書いてあった。以前のエントリーの年齢からの推測は間違っていなかった。最終章の「私たちはこの世に何を残していくのか」の原題は「On Death」(死について)。Mement Moriという言葉がある。死を思えばこそ、一日いちにちを充実して生きる。そして、なにを次の世代に残せるのか、と問い続け、実行し続ける。実に共感するところ大だ。

「30通」の英語版も入手している。すばらしく格調高い英語で書かれている。ウォード氏の教養が余すことなく発揮されている文章だと伝わる。時間はかかっても通読したいものだ。