HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

経済効果の波及にかかる時間

安冨先生にぜひ解明していただきたかった問題。「経済学の船出」で扱われた経済学の最適化に関わる計算量が無限大になるという話しに関連した話。

経済学の船出 ―創発の海へ

経済学も学問なので、独立変数Xが変化した時、Yがどう変化するかを説明する。この時、経済学のありとあらゆる理論、説明はXが変化した後、恒常状態になった場合のYをなんの説明もなしにもってくる。

Y=C+I+G+(X-M)
Y=総供給、C=消費、I=投資、G=政府支出、X=輸出、M=輸入

マクロ経済についての質問ですが、 Y=C+I+G+(X-M) Y=総... - Yahoo!知恵袋

ありとあらゆる物理の式は時間の経過を前提にしている。例えば、落下物の移動距離は時間の関数として表せる。

L = - 1/2 g t^2

重力や、電磁波がどのような形で働いているかは不可知でも、その波及スピードが人間の生活時間から見れば無視できるほど短い時間で不可知の力Xの対象Yへの作用が恒常状態になる。よって、観察可能で、可知でると宣言できる時間の単位では、XとYは線形の関数で表せる。

経済学の式は、熱量の変化による恒常状態の式のようだと想っている。「熱力学的平衡」というのだそうだ。

熱力学的平衡(ねつりきがくてきへいこう、英語: thermodynamic equilibrium)は、熱力学的系が熱的、力学的、化学的に平衡であることをいう。このような状態では、物質やエネルギー(熱)の正味の流れや相転移(氷から水への変化など)も含めて、熱力学的(巨視的)状態量は変化しない。

熱力学的平衡 - Wikipedia

ここでは、分子にあたるのが個々の人間となる。これをマクロで見るのか、ミクロで見るのかで、基本的にはマクロ経済学ミクロ経済学となるはずがどうもそうではない。どちらの分野にしろ、時間の経過による変化、百歩譲って経済学の原理が正しいとしても、どのくらいの時間の経過で作用するのかを明確に定式化した経済学に出会ったことはない。

日々「事業」という経済活動に関わるものとしては、まさにこのどれくらいの時間の経過で、需要と供給が恒常状態になるのかを知りたい。経済学の原理に基づけば、ほとんどの中小企業は熱的死に至ることになってしまう。しかし、日々企業は生まれ、継続し、いくつかの企業は大企業という盤石の地位を獲得し、いくつかの企業は老舗と呼ばれるほど事業を継続し、いくつかの企業は死滅していく。すべてが時間の作用であり、経済学の理論では説明できないわば熱的な「ムラ」、「淀み」に生息していると言える。

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安冨先生は別の方向に行ってしまわれたようだが、「貨幣の複雑性」と「経済学の船出」の先に描かれるべき経済学があったように想う。

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