HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

マスターマインド

子供の作文の手伝いをした。3つのテーマから一つを選択して、物語を作れという課題だった。子供は、「人の心が読めるようになったらどうなるか」というテーマを選択した。「人の心が読める」とどうなると想うのか、子供の話を聞いて箇条書きにしてみた。その箇条書きをもとに、一緒に物語りに組み上げた。

 夜、突然頭が痛くなった。痛くて、痛くて眠れないほどだった。よく眠れないまま朝が来た。よく朝、いつのものように会社に向かった。途中、バス停で人にぶつかった。その人は、確かに「ごめんなさい」と僕に言った。しかし、同時にもう一つの声が「ふざけるな、こいつ!」と僕を罵る声が聞こえた。ふと、気付くと周りの人も、口を開いている訳ではないのに、「朝からなにをどじってるんだだ」、「朝ごはん美味しかった、晩御飯はなにかな?」と声が聞こえてきた。どうも僕は人の心の声が聞こえるようになったらしい。
 会社につくと、朝から上司の面接だった。「最近がんばってるじゃないか。君を評価しているよ」と上司は口に出して言った。しかし、同時に「昨日の書類は、ひどかったけどな」と心の声が聞こえた。面接が終わってすぐに、昨日の書類を上司が気に入るように作り直して、再提出した。この繰り返しで、上司は僕を高く評価してくれるようになった。
 同僚からも「お前がんばってるな!」と褒められるようになった。しかし、必ず「たいした努力もしないで上司にこびてやがる」とか、「どうもこいつは上司の気持ちがわかるらしい。薄気味悪いやつだ」とか、心の声が聞こえてくる。だんだん、職場で友達を失い、僕は孤独になっていった。変な噂を流され、次第に上司からの評価もさがってきた。それでも、周りからの心の声は消えない。ノイローゼになりそうになった。「やめてくれ!」、とうとう職場で立ち上がって大声で叫んだ。
 ふと気づくと、僕はベッドの上にいた。自分の寝言で目が覚めたらしい。人の心の声が聞こえるようなったのは夢だったのだ。これからは、地道に努力をして、本当の人からの評価をもらえるようにしようと心に決めた。

実は英語の宿題でこれを英文に子供は訳した。完成した子供の英作文を読んでみて、気になったのは最後の段落を「精神科医に会いに行った」と変えたこと。そう変えてしまうと、統合失調症かよというオチになってしまう。うーん。心理的に不安定な時期にどう子供をサポートするかは大事な問題。仕事柄、家庭環境柄、なかなか十分にサポートできないのがもどかしい。

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