「やわらかい遺伝子」にも飢餓の遺伝的記憶、胎児時点での飢餓体験が生涯、その子どもまで影響するという話しが出ていた。
1988年、医学者のデーヴィッド・バーカーが、イギリス南部のハートフォード州内の六つの地区で、1911年から1930年までに生まれた5600名以上の人の死因を調べた。すると、誕生時と一歳の時に非常に体重の軽かった人は、虚血症の心臓病でなくなる割合が高かった。体重の軽い赤ん坊は、体重の重い赤ん坊の三倍近くもこの病気でなくなっていたのである。
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著者はこの後、大事に世界体制の収容所体験者、清仏戦争の飢餓などの追跡調査にも触れて、赤ん坊よりも前胎児の時点での飢餓体験がそのまた子どもの代に至るまで、遺伝的な「スイッチ」を入れてしまう事例を紹介している。
つまりは、飢餓を経験すると遺伝子レベルで産児制限がかかるということか。飢餓や、絶滅すれすれ状態が長く続いた遠い、遠い、ご先祖様の「適応」のプロセスなのだろう。
遺伝のスイッチは、強烈ではあっても、人生の体験の中で入るものなのだと。