「月に繭、地には果実」を読了した。どうしてこうなってしまうのか?、と嘆息するほど失望に満ちた結末だった。

- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2001/08
- メディア: 文庫
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始まりがのどかな田園風景。しかも、なつかしさを感じさせる時代の人物、風物からはじまっただけに、この結末の陰惨さがショッキングだ。
人は生きている限り、いや、生き抜く力を持つ限り争うことからは無縁ではいられない。生き抜くための力も力だからだ。真摯に「生きろ!」と叫ぶ同じ声が、「戦え!」と号令する。国を守る危機意識が、他国へ攻め入る焦燥につながる。それらはコインの両面だ。
結論は、本書に十分描かれている。それでも、ああ!、と嘆息するしかない。実に切ない。
にしても、本書はガンダムUCの世界と接続している。福井さんは、富野さんが描ききれなかった変わるべきだが、変われない人類の、私たちの未来を、結末を明快に描いている。ターンAとUCとの補助線がいくつも見える。並行的な登場人物の連なりが見える。