HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「貧乏人の経済学」における貯蓄

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える」をようやく読み終わった。これは、あまりにしつこい本。経済学素人には、読むのがつらい本だった。

この本がなにを主張してるかは、「スゴ本」のすばらしい記事を読んでもらうのがいい。

「スゴ本」で足りなければ、本書に収録された翻訳者である山形浩生氏の「訳者解説」を読むのを勧める。

私が特に興味を持ったのは第8章の「レンガひとつずつ貯蓄」。冒頭にインドのROSCAと呼ばれる無尽講のシステムが活用されているという話しだ。

21世紀となった現在でも、日本各地(主に農村・漁村地域)に、無尽や頼母子、模合と呼ばれる会・組織が存在している。メンバーが毎月金を出し合い、積み立てられた金で宴会や旅行を催す場合もあれば、くじに当たった者(くじと言いながら実際は順番であることが多い)が金額を総取りする形態のものもある。多くは実質的な目的よりも職場や友人、地縁的な付き合いの延長としての色彩が強く、中には一人で複数の無尽に入っている人もいる。沖縄県では県民の過半数が参加していると言われるほか、九州各地や山梨県福島県会津地方などでもよく行われている。

無尽 - Wikipedia

おお、そうだったのか、日本でもまだ現存しているんだね。

基本的には、貯蓄をするのに長い長い時間をかけるよりも鍋を回して集めたお金をくじで一人がとりというシステム。本書で述べられているように貧乏人が貯蓄をするさまざまな困難や、金額が貯まるより取り崩してしまう誘惑、貯蓄を始める多大な自制心などの、貯蓄を難しくするさまざまな問題を回避している。くじにあたれば、在庫を買ったり、商売道具を買ったり、家を建てられたりする。「講」組織になっていて、仲間の強制力により必ずお金を拠出する強制力があることがまた「貧乏人」には大切らしい。

一方、「貧乏人」が貯蓄を嫌い、借金をするという姿勢には、インフレ率や、政府へに信用という問題もあるようには想う。が、この辺は本書では述べられていない。

マンションというモノにこだわるのはお金を信用していないからだと現地の方がおっしゃっていた。モノをつかんでいる方が、おカネよりも安心していられると。

ベトナム人は政府にもお金にも期待していない - HPO機密日誌

考えてみれば二宮尊徳の仕法は、「貯蓄」の奨励が基本だ。空き時間を見つけて、縄を結い、それを売ったお金で借金を返すなり、貯蓄をするなりすることが基本だ。いかに自制心を発揮させ、誘惑にまけないようにするかに知恵が注がれる。そして、そこにはまた村の協力体制の問題につながる。

貯蓄という一側面だけ考えても、ソーシャルキャピタルという「講」の考えにも似た、人と人との信頼関係が基本になる。これがあるかないかが、貧困に留まるか、そこから脱出できるかの鍵となる。