ネットで話題になっていたので、てくてく見にいってしまった。ひたすら感激した。これは母と子の素晴らしい物語だ。
「サマーウォーズ」の後から後からでてくる話しとは真逆のこれ以上シンプルにできないくらいにシンプルにできている。抑えた言葉、抑えた動き、抑えた登場人物。シンプルなだけに感激がストレートだ。
しかも、絵が美しい。実写と見紛うばかりのコンポジットによる背景と、手書きの味のあるキャラクターが見事にひとつになっている。
以下はネタバレを含む感想。
これはシングルマザーの物語だ。一人で子どもを育てるとまどい、周囲の無理解、そして成長の喜びと寂しさ。
「だからこの映画は、母親の役割を通した女性の話として作りたかった。」
映画「おおかみこどもの雨と雪」- 細田守監督インタビュー
宮崎あおいさんに「花」をやってもらったことへの思いがインタビューで語られている。突然、母になり、ひとりで赤ん坊たちを育て、成長を見守り、巣立ちを経験する。これ以上の成長の物語があるだろうか?

- 作者: 細田守
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/06/22
- メディア: 文庫
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もうこの表紙の絵にすべてが語られている。
随所に出てくる「本棚」が好きだ。「ライオンと魔女」、花が生計を立てるために一生懸命勉強する園芸の本、「床の下の小人」もあったかな?、当然エンデの「モモ」も並んでいた。こうしたディテールが楽しいし、花の人柄を伝えてくれる。
この物語のまたすごいところは、懐かしさを感じる風景が描かれているのに、時間軸としては平成20年あたりから平成30年までの未来の物語であるところ。そして、その未来であることをさくっと語っているところ。 まさに、未来進行形の物語だ。
「雨」と「雪」の成長に、ウルフガイの犬神明少年とその母親を思い出すのは反則だろうか?

- 作者: 平井和正
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1992/09
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更に気づいてしまったこと・・・・。
ブログ界隈の感想が男子ばかりだなと。ふと気づくと、男にとって花は究極の都合のいい女かもしれない。狼男の夫は本能に任せて狩りに言って死んでしまったと。花は男がいなくなっても、家計を支え、子どもを育てる。
いや、そういう家族制度を破壊につながるような思想はよくない。そういうフェミニズムを気にしなければ、映画の感想すら言えない社会はおかしい。これは現代のおとぎ話で、みんながここに涙することが大切。
ここでこそっとつぶやくだけにとどめておこう。