HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

デザインはコミュニティーの夢を見るか?

「コミュニティ・デザイン」を大変興味深く読んだ。ご推薦いただいた方に深く感謝申し上げたい。

コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる

コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる

山崎さんがしている仕事はとても重要。神戸の震災を既に体験されている方だけに、オビの言葉は重い。

瓦礫と化したまちに残っていたのは人のつながりだった。


モノをつくるのをやめると、人が見えてくる
状況はまだまだ好転させられる

ただ、モノが動かないと人のつながりが生まれないという面はある。明日なき老人のための福祉、健康に国家予算の数十兆円を使いながら、次の世代のために国の競争力と安全を高める公共投資などは数兆円単位だ。これでいいのかという思いは常にある。

だが、山崎さんは、お金を使わないでも、コミュニティを作れることをいくつものプロジェクトで証明している。公園のマネジメント、離島の街づくり・観光開発、ダムやマンションの建築現場、ここまで立派に「モノをつくるのをやめると、人が見えてくる」現場のストーリーを見せつけられると、感嘆するほかない。

正直、古い古いコミュニティにいると親分がいて、長く続く親戚・姻戚関係があって、なかなか街づくり、ふるさとづくり、観光開発は進まない。ある意味、山崎さんは「異人(よそもの)」であるからこそ、ここまで変革の旗手となりえたのかもしれない。

いずれにせよ、野村総合研究所の地域開発の山形浩生さん、日本政策投資銀行から日本総合研究所へと移られても仕事の軸は地域にある藻谷浩介さん、そしてコミュニティー・デザインの山崎亮さんと、決して中央一辺倒ではでてこない発想がここにある。そう、大阪の橋下市長もそうだ。この4人の方のお名前を見ているだけでも、地域という多様性こそが国を救うのだと実感する。ジェイン・ジェイコブズの主張は正しいと改めて主張したい。

政治家や役人は、多様性を嫌う。政治システム、官僚主義は常に一様な被統治性、全体主義を志向する。(中略)いくらかの統制は必要であっても、全体主義への希求は、いつでも危うい場所へ人を導く。

必要なのはハイエクの言う自由だ。自然に成長していく社会ネットワークだ。自由な人々こそが多様性を作り出し、社会的ネットワーク、ソーシャルキャピタルを豊穣なものにする。

多様性は政策では作れない: 統治と自由 - HPO:機密日誌