HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

江戸の沙汰も金次第

江戸時代の諸金融制度はいまと仕組みとしては大して変わらないという事実にあらためて驚いている。

江戸の経済システム―米と貨幣の覇権争い

江戸の経済システム―米と貨幣の覇権争い

たとえば、大阪と江戸で、銀遣い、金遣いと事実上一国のうちで二つの貨幣システムが動いていた。しかも、毎日相場が立っていたというからすごい。

もう一極の貨幣ともいえ、本書のサブタイトルの「米と貨幣の覇権」にもある米に至っては、現代の船荷証になるのだろうか、蔵からいつでも米を引き出す権利証である米切手から、先物相場まで、現代の商品市場にそなわっているものはほとんどそろっているように思われる。

現代に直結していると思われるのは、業種別の組合組織、株仲間というやつだ。株仲間や業界団体が組織され、縦割りに「お上」に管理されていた。また、この株仲間に入るには、既存の会員の全会一致の賛成が必要であったという。土地すらも、その区画を手に入れるためには、既存地主からこれまた全会一致の承認が必要だったという。その代わり、一旦株仲間、地主組合に入ったからには、なにか事があれば連座制で責任を取ることになっていたという。これは、現在の「士」別の協会組織や、あるいは生コン組合の責任の取り方そのものではないだろうか。

平成の世の、いまの経済体制は江戸時代からの連続性でとらえた方がよいのかもしれない。つまりは、ほっとけば衰退していく安定経済であると。戦争をしない経済がどう成熟し、衰退して行くかの見本ではある。公共事業が非常に大きな比重をしめくる傾向はあるようだ。

この経済システムとしてとらえたとき、改めて江戸の経済の中で物流システムの整備の重要性が見えてくる。