HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「かみかけて さんご たいせつ」

珍しく歌舞伎を見てきた。といってもシアターコクーン歌舞伎。実に分かりやすく、楽しんで見れた。演じている役者さんたちも楽しんで演じているのが伝わってきた。

事前にあらすじを読んでも少しもわからなかった。それが舞台が進むにつれて、実に見事に展開していく。二階席からだったのに、表情までも伝わってきた。

本作が作られた事情は、「四谷怪談」が大当たりのさなかに主演の三代目尾上菊五郎太宰府参詣のため中村座を退座してしまい、困った関係者が作者南北に急きょ作成させたことにある。小規模な作品だが綿密な構成、凄惨な殺し場に満ち、しかも喜劇の要素も絡ませるなど南北の作劇術の才能が溢れた作品で、「四谷怪談」とともに評価が高い。

盟三五大切 - Wikipedia

ひとことで言ってしまえば、夫がいることを隠して近づいてきた女にだまされた侍が凄惨な復讐を遂げる物語だ。これだけ人情と心の奥の暗いものが引き出されていながらも、「忠義」が徳目として強調されていることに、現代との違いを感じる。