HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

円高は中国様のおかげ

「選択」の中の記事が目に留まってしまった。円高が中国の国益にかなうということは、米国が円高を必要としているという議論よりも、理にかなった話だと私は思う。

「何て言ったって、今回の円買いはものすごい援護射撃があるのが強いよ。中国だよ、中国」
 ヘッジファンドの運用担当者はこう言って、ウフフと笑った。ウォールストリート・ジャーナルが八月十日付で「中国が円高を加速させる」と報じた日の電話である。

 中国は円の積み増しを加速させている。今年一〜六月の日本国債投資は一兆七千億円で、過去五年間に行った投資合計額の実に五倍。その後もひと月に七千億円は買っている。目的は言うまでもなく、日本の輸出企業と競合する中国企業が人民元高で失いかけている競争力を補うこと。

「円高攻勢」に立ち尽くす日本 - 三万人のための総合情報誌『選択』

原文を探してみたが、サブスクライブしていないと全文は読めない。が、かなり長文で引用してくださっているサイトを見つけた。イタリックにした部分はちょっと違う。

Intended or not, Beijing's yen buying will benefit Chinese exporters that compete with Japan, and pressure Japanese companies to move even more fabrication facilities to lower-cost China.

2010年08月10日(火曜日) China's Yen for .... /YCASTER 2.0:伊藤洋一公式サイト

試訳してみると。

意図しているかどうかは別として、中国政府が円を買うのは、日本と競合する中国の輸出会社に利益を与えている。そして、日本の会社により多くの加工施設をコストの安い中国へ移すことへの圧力になっている。

逆に言えば、中国は急速にコスト競争力を失いつつあるとも言える。ASEANが経済成長著しいと同じ「選択」に紹介されていた。つまりは、こういうことをしなければならないほど中国も手を失っているともいえる。いま、経済成長が鈍化したらなにがおこるかわからない。

とはいえ、投資としては成功だったろう。投資の基本は値が上がるものに投資することにつきる。中国政府は、今年の始めには94円程度だった円を一兆七千億円分買って、いまは84円にまで値上がりしているわけだから半年で10%、年率20%の利益をあげたことになる。残高の平均は円高に推移している中で買われたということで、仮に平均残高の単価は半分だとしても、5%、850億円あまりの利益をあげたことになる。国益を守りながら、為替差益もあげるという荒技だ。

リスクはなにかといえば、円が急速に円安に向かうこと、国債が値崩れすることだ。つまりは、米国債の残高が示すように中国は外貨の残高を増すことにより米国との経済的な利害が一致する方向に動いている。日本の国債を中国にたくさん買ってもらえればもらえるほど、中国政府も日本の経済と利害が共通になってくる。

つまりは、円高に触れているいまのうちにできるだけ長期の日本の国債を中国様に買っていただきながら、ジェスチャーに終わるにしても、円の流通量をふやすなどできるだけ円安に向かう政策を取ることではないだろうか?

あくまで素人考えだが、中国と経済的な利害を一致させる努力は、将来の日本を救う。


■参照

同様の内容をより専門的で正確に書いてくださっている。