HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

エッセンシャル版マネジメント ぬきがき その1

ドラッカーってやっぱりすごいなとつくづく思う。平易な言葉で平易なことを語っているんだけど、どれだけ語っても本質を外していないってすごすぎるな。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

新しいニーズの出現

そしてもっとも重大な変化が、社会の願望、価値、存続そのものが、マネジメントの成果、能力、意志、価値観に依存するようになったことである。

もとからドラッカーはマネジメントを企業経営という小さな分野でとらえていない。ありとあらゆる人間の営為の中で、成果をあげるために真摯に責任をとろうとする行為すべてを行っているように私には思える。そして、それがグリーン革命という形であれ、グローバル企業の台頭という形であれ、中国におけるマネジメントブームであれ、思想でなくマネジメントという行動そのものが世界を変えたことをよく熟知していた。

大昔から、働くことは、集団に属して仲間を作る欲求を満たす手段だった。アリストテレスが、人は社会的動物だと言ったのは、人は社会との絆のために働くことを必要とすると言ったのである。

この言葉は、労働の5つの次元ーーー生理的な次元、心理的な次元、社会的な次元、経済的な次元、政治的な次元ーーーについて書かれた箇所に段下げで記されている。これぐらい人が働くことの意味について、端的に述べられた言葉を知らない。この言葉を政治家が十分に腹の底から理解すれば、福祉の問題から、年金の問題から、地域の活性化の問題まで片付けられると私は思う。政治、行政にといて本質的に必要なのは、金を再分配することなのでく、金を再分配することなどを通して人々の間に社会的絆を実感できる労働を与えることなのだ。

実行

必要なことは実際に行うことである。それは、ビジョンや態度を変えるよりはやさしいはずである。
1.その第一は、仕事と職場に対して、成果と責任を組み込むことである。2.さらに、共に働く人たちを生かすべきものとしてとらえることである。3.最後に、強みが成果に結びつくように人を配置することである。
この程度のことでは、これまの人事管理を批判し、新しい理念と方法を要求する人たちを満足させることはできないかもしれない。しかし、人を生かすべきものとして扱い、その適材適所を図ることはできる。言葉の遊びではない。厳しく難しい。ユートピアをつくりはしない。だが、それは組織を業績に向かわせる。退屈な仕事や人を面白く楽しいものにはしないが、楽しいはずの仕事や人を退屈なものにするのを防ぐ上で大きな働きをする。

モチベーション3.0」を読んだ違和感の根っこは、ドラッカーがここまで言い切っていることにある。緊張して、がちがちに肩に力が入り、上げるべき業績のことしか考えていなければ、仕事がうまくいくはずもないが、仕事とは楽しいだけのものでもない。つい先日、ドラッカーBOTがつぶやいていた。

よくマネジメントされた組織は、日常はむしろ退屈な組織である。

http://twitter.com/DruckerBOT/status/20307902283

逆に言えば、こうなる。

逆に言えば、よくマネジメントされてない組織は、日常がむしろエキサイティングな組織である... おそろしい。

http://twitter.com/hidekih/status/20613089977

「人を生かすべきものとしてとらえる」なんて当たり前だと誰もがいうだろう。しかし、日々の実行においてそれがどれだけ大切であり、どれだけ意識されているかは疑問だ。先ほどの労働の5つの次元の政治的次元や心理的次元の方を優先してはいないか自分に問わなければならならい。日々三省だ。

社会の問題は、事業上の機会に転換すれば、もはや問題ではない。しかしそうできない問題は、社会にとって、たとえ退化病とまではいかなくとも、慢性病となる。


(中略)


それらの問題も、マネジメントにとっては重大事である。企業の健康はマネジメントの責任であり、企業の健康は社会の病気と両立しないからである。企業が健康であるためには、健全な、少なくとも機能する社会が必要である。社会と地域の健全さこそ、企業が成功し成長するための前提である。それらの問題が自然になくなることはありえない。誰かが何かをしなければ解決されない。

もうこれ以上言うことはないだろう。企業は地域と社会に「なくてはならい」存在で蟻続けることこそが、その企業をマネジメントする目的だ。そして、企業が企業であるために、その活躍する舞台に信頼性や、企業で働く人々、顧客の経済的、身体的、精神的な「健康」がなければならない。たまたま昨日、非常に優秀な米国人と話しをした。信頼の重要性について「失われると二度と回復できない。しかし、人々が生きていくためには絶対に必要不可欠なもの、それが信頼だ。」と言ってくれた。その方がMacユーザーであることとあわせて、大変共鳴した。

そして、社会の健全性に関して企業が最も貢献できるのは、雇用を維持拡大し、雇用した社員を常により高い次元目指して成長させつづけることだと私は思っている。