HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

ダイレクトマーケティングについて書かれた最悪の本

考えられる最悪のタイミングといえる2006年に本書は翻訳された。日本が失われた10年、いや15年をようやく脱しつつあると言われた2006年だ。失われた年月の苦しさはまだ日本のそこかしこに反響している。しかも、日本のダイレクトマーケティングの草分けである金森氏というとんでもない人が監訳をしている。金森氏の序文までついてしまっている。

全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術

全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術

この「10倍売る人の文章術」という本自体が壮大な釣りなのだ。どうしてもこの本を読むと人に勧めなければならない誘惑に駆られる。コピーとはボディの1行目を読ませるためにあり、ボディの1行目は2行目に読み進める為にあると・・・、以下最後の行まで続く。コピーの伝えたい内容など、二義的なものだなのだ。つまりは、コピーからボディまですべては「釣り」なのだと。シュガーマンの「釣り」の巧妙さは、「壮大な釣り」以外のなにものでもなかったチーズについての例の一冊を上回る。あれだけチーズの本が売れたにもかかわらず、いま誰が著者のスペンサーを話題にするだろうか?

チーズはどこへ消えた?

チーズはどこへ消えた?

「10倍売る人の文章術」を読んで頭を殴られたような最悪の気分になった。ひどい、ひどすぎる。

これまで私にとってダイレクトマーケティングと言えば、いつも、いつも送られてくるファックス用紙の無駄以外なにものでもなかった。いわく、「どうしてもあなたとこの幸せをわけあいたくお手紙をさしあげます」、いわく「売れて売れて仕方がないんです」、いわく「ワルのマーケティングを知っていますか?」。その根源の指導をしているという敬愛する神田先生の影響力のすばらしさに感心していたものだ。

この「全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術」が出版されたことによって、ダイレクトマーケティングの動きはより巧妙になり、加速されるに違いない。もしかすると、テレビでおなじみのあの販売上手の社長さんの元気な声すら聞けなくなってしまう悪い予感がする。本書がもし10年前に翻訳されていたことを想像すると鳥肌が立つほどだ。原著は、1998年に出版されたいたというのに。

もう書画すらアマゾンに残っていないほど古い本なのだ。

とにかく本書を読んではいけない。特に事業をしている人は絶対にだめだ。こんな本を読んでいては、日本のリテールの競争がますます激化し、消費が促進されて景気がよくなってしまう。絶対に読んではいけない最悪の本であることを銘記してほしい。

私だけで独占していればよいのだから...

「10倍売る人の文章術」のテクニックの練習として本エントリーは書かれた。


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全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術