HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「本当の中国を知っていますか?」

本書を読みながら、中国へ行けたのはなかなか刺激的なことであった。

本当の中国を知っていますか? ――農村、エイズ、環境、司法

本当の中国を知っていますか? ――農村、エイズ、環境、司法

副題は異様に刺激的な言葉が並んでいる。内容はごく落ち着いている。地に足のついた取材に基づいている。こうした書籍の価値は、中国への姿勢の取り方なのだ。本書の落ち着いた取材姿勢から、中国は戦争中の体制を多く残したままなのだと理解した。戦争に民主化はいらない。

まだ戦争状態なのだと見れば、戦意高揚のために「八路軍」とか、「抗日」とかいう番組をゴールデンタイムに流し続ける中国中央電子台、CCTVの方針も理解できる。

この本を読了して分かったことがある。結局国の在り方とは政体のあり方なのだ。民主主義を「歴史の終わり」の究極の政体と考えるのか、賢人による権威を持った政治が21世紀のいまも有効と考えるか?本書のこの部分が重要なメッセージだ。政体の問題は、本書が後半で比較を行っている中国と、同じ漢民族支配のシンガポール、台湾との比較において明確になった。ちなみに、台湾は戦時体制から民主主義政体へ向けて変化した。

それでも、商売にたずさわる私のような人間にとって、いまの権威主義が徹底した中国のあり方に一抹の共感を覚えてしまうというのは、正直なところだろう。