HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

敗北を抱きしめて その1Embracing Defeat

敗北を抱きしめて by ジョン・ダワー

思ったよりも長くかかったが、ようやく読了した。ゆびとまさんにお薦めいただいた。文句なしに現代の日本人が読むべき本であると感じた。ゆびとまさん、本当にありがとうございます。しかし、決して私は本書の主張に全面的に賛成することはできない。

私にひびいてきた本書のテーマは4つある。

共産主義者=ソ連、そして米国という軸が戦後の日本の体制におよぼした影響。

・戦中から戦後に温存され、GHQにより強化された官僚主義の重さ。

東京裁判の結果及び天皇の戦争責任の取り方がおよぼした影響。

・現代日本人の敗北主義の源流。

私にはとても「重い」本なので何度かにわけて感想を述べていきたい。いや、とかいいながらこの一回だけで終わるという説も...

敗戦を抱きしめて

共産主義者あるいはソ連が日本に及ぼした影響。あるいは、共産主義との戦いとしての昭和天皇の御代

本書を読んでかなり切実に思い至ったのが、共産主義への恐怖と、現実にソ連と想定される他国からの工作等に、日本の近現代史が強い影響を受けているという事実だ。

傍証をあげればキリがないが、本書でも簡単に触れられている皇道派と統制派の北のソ連を攻めるか、米国の挑発に乗るかの闘争もひとつの例かもしれない。あとからどれだけゆがんでしまったかはかりしれないが、日本が朝鮮半島に進出せざるを得なくなったのは、ロシアへの脅威から自国をまもるためであり、日露戦争が起こったと私は理解している。この日本の危機感から、日独伊の三国同盟が結ばれ、ドイツと日本でソ連を挟撃するのだというのが、1930年代の日本の大戦略であったと思っていた。それがなぜ南印を攻め、米国などと戦わざるを得なくなってしまったのかが
非常に不思議でならない。

ノモンハン
2.26の年代

少し前に大国の興亡を再読したのだが、ここにソ連の1930年代から1940年代の国力の分析がある。どうもこの時代、ロシアはかなりやばい状態に落ち込んでいたらしい。

本書で簡単に述べられているのが、ここをめぐる皇道派と統制派の闘争だ。日本の政策の流れからいえば、当然ここで大戦略を崩さず、米国の挑発にのらず、なすべきことをなすべきであったのが、東条英機首領とする統制派の主張が優先してしまった。

日本の軍国主義化、開戦に及ぼした共産主義者の影響
なぜ日本軍は北へ向かわなかったか?
なぜこの大きな戦略の変更が歴史で教えられていないか?

一体「革新・進歩派」が改憲を望み、保守が改憲を主張するなどという愚。これを外部からの内政干渉以外にどのような解釈が可能なのか?しかも、歴史的に対「米帝」などというスローガンを使い米国に反発しながら、どうやったら明らかに米軍が作った憲法を守るなどということがありうるのか?


どなたかのように統制派がアカだったと主張することは難しい。しかし、かなりの北からの介入があって、日独伊の枢軸を結んだ大戦略がゆがめられ、大東亜戦争が太平洋戦争になってしまったのだろう。冷静に考えれば、南印に攻め込む理由も、まして米国と戦う理由もない。

終わったことを今更探索しても仕方ないが、太平洋戦争の真の原因についてきちんと探求され、教育されていないというけとが問題だ。ましてたまたま昭和天皇の治世とかさなる1930年代から1980年代が共産主義者と保守派との争いとバランスの歴史であったことを、私は理解すべきである。一体、いま戦後生まれで何人が皇道派が北進を主張していて、統制派がこれを逆転したことを理解しているだろうか?昭和19年に日本にクーデターがあったことを知っているだろうか?

ああ、なによりもダワーのような言説にふれてプライドを刺激されない、あるいは諸手をあげて歓迎する現代日本人とは一体なんなんだろうか?


東京裁判における戦犯の戦争責任、天皇の戦争責任

・戦中戦後を通して温存され、米軍によって強化された官僚組織

・現代日本の敗北主義の現流

米国の傀儡政権としての戦後政治
与えられた日本国憲法