HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「ひらがなでよめばわかる日本語」

中西進先生の「ひらがなでよめばわかる日本語」を読了した。

ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)

ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)

内容にはついてはウェブ上に素晴らしい解説、説明が存在する。

bookmeter.com

中国語や、他の国からの借用でない、本来の「やまとことば」の豊かさについて中西先生の素晴らしい学識と感性を込めて書かれている。

実は、35年前に私は筑波大学中西進先生の比較文学の講座を受けたことがあった。万葉集はもとより、中国古典、歴史など、深く広いご見識についていけるわけもなくCの成績であったと記憶する。先生の「岩」の永遠性についての日本文学の話を、比較宗教学の授業でつけ刃で学んだエリアーデを引いてあまりに拙いレポートを書いたと記憶する。

本書を読んでいて「草枕」、「たび」の部分で「岩を枕とする」のが死だという話しが出てきた。確か、これは授業で触れていらっしゃったように記憶する。一瞬、比較文学の授業の一場面が私の脳裏に浮かんだ。私のような門外漢がお名前を出すこと自体失礼極まりないとは思うものの、五十代のいま改めてご著書にふれることができたことは喜びだ。

昨日新幹線の中で「ウェッジ」という雑誌を読んで、中西進先生が、「焔」という絵のことを書いていらっしゃった。普通の女性がただすわっている絵なのに、そこに込められた想いの深さ、業の深さについて語っていらっしゃった。目で見えるものと、表現されたものとの違いだと。

男女の愛と芸術の生成の秘密 - HPO機密日誌

雑誌、ウェッジの先生の文章が本になっているようだ。読んでみたい。

日本人の忘れもの〈1〉 (ウェッジ文庫)

日本人の忘れもの〈1〉 (ウェッジ文庫)

米中南北問題がこれくらいで済んでいるのは地球が小さくなったからでは?

米中の泥沼のような貿易戦争、花火のようにミサイルを打ち上げる北朝鮮、1度約束したくらいでは約束にならない韓国など、自分の意思以外のところで木の葉のようにゆれうごく日本。それでも、これだけ東西南北の「ヘイト」合戦でもなんとか踏みこたえているのは、国民と国民の距離が縮んだからではないだろう?

kabumatome.doorblog.jp

更に加えて香港の情勢など、リアルタイムに入ってくるから、まだ落ち着いて見ていられるのものの、本来だったらイギリス、米国が自国民救出に軍隊の出動を要請していてもおかしくないくらいの国家と国民の対立ぶりだ。

米国、中国、北朝鮮、韓国のいずれもが自国ファースト、自国内の政治の延長線で外交方針、対立激化を打ち出している。本来、もっともっと国と国、国民と国民との対立の溝が深まっていても、おかしくはないのだが、それはいまのネット時代。そして、人と人との行き来も史上最高速になっている。お互いにカウンターパートナーの国の事情をモニタリングできているので、決定的な不信、戦争の引き金となるのを回避できている。これが第二次大戦以前のモールス符号の通信や、ごく少数しか海外交流ができなかった時代なら、自国ファーストの国家元首ばかりではもう戦争になっていてもおかしくない。

しかしまた、情報のコネクションが密であるだけに、ブラックスワン的なカタストロフィに一気に向かわないかリスクは背負っている。ブラックスワンを提言したナシーム・タレブ自身が自分の故郷のあっけない崩壊について書いている箇所は常に私の念頭から消えない。千年の平和を誇った都が本の数ヶ月で多数の難民を産むほどの崩壊状態になってしまったのだと。

タレブの経験した平和だったレバノンが内戦状態になってしまった顛末と、自身の癌を克服した経験ががあり、彼に深い洞察を与えているよう

ブラックスワンと安冨先生の二つの創発 - HPO機密日誌

ja.wikipedia.org

強いて言えば、ヒットラーがラジオや、映画など、当時最新のマスコミをプロパガンダに使ったことは記憶にとどめおくべきだと。タレブのレバノンのように国と国民との間の信頼がなくなれば、あっというまに国など転覆してしまうのだから。

国際情勢など私は全くの門外漢だが、現在の情報社会の功罪を感じざるを得ない。

AWS大規模障害とMr. Robot(ネタバレあり)

先日のAmazonクラウドサーバーの大規模障害は、空調制御の「バグ」が関係しているとい伝えられた。

今回の障害は、空調などを管理する制御システムに内在していたフェイルオーバー処理に関連するバグと、制御システムと空調装置などを接続するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)の異常動作が重なったことが原因としている。

AWS大規模障害の原因公表、制御システムのバグとPLCの異常動作が重なる | 日経 xTECH(クロステック)

米国ドラマファンとして反応せざるを得ないのは、大規模サーバーへのハッキングの手段として温度制御のバグに見せかけるというシナリオが「Mr. Robot」にそのままあるからだ。

hpo.hatenablog.com

Mr. Robotはいうまでもなくクィーンのフレディー・マーキュリー役で一躍ブレークしたラミ・マレック出世作。同時に、現代の世界の様々な問題、仮想通貨、個人情報、べき乗則的大規模情報集約、国家間の調和から利害対立など、に内在するリスクを見事に描いているところだ。

エリオット、計画を話す。スティールマウンテンの空調システムをハッキングして室温を上げ、データ保管に使われている磁気テープを壊す、というもの。
(中略)
データ保存に使われている磁気テープは35度以上になると読み取り不可能になるので、エアコンの操作盤に基盤を設置して空調システムに侵入し、温度を35度以上に操作して磁気テープを壊す、というもの。

Mr.Robot感想雑記 S1E4 「デーモン」 - さいたに感想めも

ほかにもフェルトセムとか、ラズベリーパイとか、ソーシャルハッキングとかいろいろ今回のAmazonの障害についてどうだったんだろうかと考えさせられることが多いのだが、技術に明るくない私にはこの程度の理解。

先日読んだこの解説の米国と中国をめぐる仮想通貨をはさんだ通貨戦争のシナリオもMr. Robotでは語られている。米国の大統領等のリーダー選択への圧力、基軸通貨米ドルと仮想通貨の関係性など、十分に考えさせられるヒントがもりだくさん。

中国の望みは来年の米大統領選でトランプ大統領が続投できないこと、米国が米内外から制裁できなくするよう圧力をかけれることかと思います。

前者は中国ができるだけ引き延ばせるように中国元安にしたり、香港の商業ハブを利用して関税を免れたり、報復関税をかけたりして生き延びようとしています。

後者としてなにかあるかと考えた時に、ドルの力が弱めることも考えられるのかと思います。

ドルは世界の基軸通貨となっています。ドルは世界中に広まっているのでトランプ大統領は制裁の一つとしてそのドルを凍結して使えなくなるようにすることができます。

これは結構強力で幾度と使われていますが、仮想通貨が現れたことによってもし世界通貨が仮想通貨になった時を考えると少し怖いですね。(まだそこまで考えられませんが)

日経平均小幅上昇 | 株知識

ただし、ヒントはあってもドラマには答えはない。今後の消費税増税、米中戦争の影響などによる日本国内の停滞を想うと、空恐ろしいばかり。もうちょっと現実的なところで言えば、クラウドとオンプレミスのデータ管理について再考しなれけばならない。先日、まさかの攻撃をくらったばかりだし。

hpo.hatenablog.com

「風をつかまえた少年」

ある方がご覧になって感動したというので見てきた。電気がアフリカの人々を救う、それも少年が風車を作って救うという話にピンと来た。以前ほんのすこし蓄電池に関わる仕事をしたことがあった*1

longride.jp

これは実話で、「少年」のウィリアム・カムクワンバ君はTEDでも話をしている。

www.ted.com

実在のウィリアム君。

ウィリアム・カムクワンバ(William Kamkwamba、1987年8月5日 - )は、発明家として知られるマラウイ人の大学生である。カムクワンバはわずか14歳のときにユーカリの木(Eucalyptus globulus )と自転車の部品、および身近で入手できた廃品を利用して風車を製作し、風力発電によってマシタラ村(Masitala)にある自宅で多少の電気製品を使えるようにしたことで、世界的に有名となった。その後カムクワンバは、マシタラ村で初の飲料水供給設備となる水をくみ上げるための太陽発電型のポンプを設置し、12メートル以上の高さを持つ風車を2基作ったほか、今後さらに2基の風車をマラウイの首都であるリロングウェを含む2箇所に建設する予定であるという。

ウィリアム・カムクワンバ - Wikipedia

そんな成功譚であるにも関わらず、途中で見るのがつらくなるほどの窮状が映画では取り上げられていた。

マラウイ共和国マラウイきょうわこく)、通称マラウイは、アフリカ大陸南東部に位置する共和制国家で、イギリス連邦加盟国である。旧称はイギリス保護領ニヤサランド(Nyasaland、ニアサは「湖」の意)。

マラウイ - Wikipedia

想うに、その当事者である住民がその気になれば、たった一台の自転車とユーカリの木で家族を、村を救える。これまでアフリカにどれだけの支援が行われてきたか私にはわたからない。しかし、その全てよりも自発的な救済の方がはるかに価値があるのだとこの映画を見て改めて実感した。

ものごとは重なるもので、NHKの朝のニュースで日本の方が太陽光でアフリカの村に電気をもたらしたという話を見た。

forbesjapan.com

なにか偶然を超えたものを感じている。

シルヴェット

諸事情あってまた川村美術館に行ってきた。山口勝弘先生の追悼展はシンプルな展示で、先生の実験的な側面は十分には伝えきれない内容ではあったが、作品はは素晴らしかった。

f:id:hihi01:20190824184829p:plain
http://kawamura-museum.dic.co.jp/application/files/8815/6384/3599/viewpoint_release.pdf

artazamino.jp
*1

さて、小学生の頃に家にあった美術全集で出会って以来、恋をしてしまった「シルヴェット」嬢との逢う瀬を楽しんできた。

f:id:hihi01:20190824185404j:plain
http://norimakihayate.hatenablog.com/entry/2019/01/29/093840

ピカソ シルヴェットとの邂逅 - norimakihayateの日記

kokai.jp

で、つい思い余って話しかけてしまった。

失礼をお許しください、id:finalventさん。

*1:私の浅い理解の中では山口勝弘先生は、筑波大学におけるメディア・アート、「つくば系アーティスト」を生む土壌を作ってくださった方だと理解している。しかし、ウェブの上には作品があまり出てこないのが実に残念。明和電機を始め、筑波大学からはサイバーなアーティストが生まれているのは偶然ではないと私は考えている。www.tsukuba.ac.jp

カーブドッチ:ゼロから1、1かて百、万へ

久しぶりに伺った。ますます素敵なワイナリーになっていた。全くのゼロからスタートされて数十年でワインだけでなく施設とにてここまで成熟させられたのは素晴らしいとしか言えない。いや、土地のテロワール、借金からからすればマイナスだった。それが、1になり、100にも、1万にも育てられている。落さんが退かれた後も発展のスピードは落ちていない。新しい砂地に合うという葡萄の品種、アルバニーニョにも期待したい。

f:id:hihi01:20191030172925j:plain

f:id:hihi01:20191030173046j:plain

ロボットレストラン

tripadvisorでの評価が高かったので、インバウンドの方々はなにを求めているのか体験するのに一度行きたいと想っていた。たまたま時間ができて、なおかつ当日朝に席を調べたら空きがあったので、行って来た。

photos.app.goo.gl

いや、楽しかった。キッチュというのだろうか、戦隊もののニセモノ感が実にいい。ビートとダンスも秋葉原のアングラアイドル的なのがいい。出てくる「ロボット」も最先端のAIではなく、単なるリモコン操作なのも実に日本的。そもそも、新宿歌舞伎町のどまんなかでこれだけのショーを実行していることだけでも、日本的だと思える。とにかく入れ替え、出し入れがよくぞここまでコンパクトに考えられているなと。

tripadvisorの評価を見直すと酷評されているコメントがあるが、繰り返すがそのニセモノ感じを味わうために日本に来たのではないのと言い返したくなる。楽しんでいる人達はニセモノ感じも含めて評価している。ようは日本のノリなのだ。

www.tripadvisor.jp

日本はたぶん聖徳太子の昔から、海外からの文化を取り入れ貧乏ながらも少しでもマネをしながら文化を熟成させてきた。ニセモノ感のコンプレックスは今に始まったことではない。その文化的消化活動だとみれば、このショーは大成功だと思うし、仕掛け人の方のお話しをぜひ聞いてみたいと私は思った。

って、なんなくあった。

田中氏: アンソニー・ボーディン氏が訪れたのが最大のきっかけですね。アンソニー・ボーディン氏という世界的にも有名な辛口のコメンテーターがいます。日本で言う所のマツコ・デラックスさんみたいな方ですね。その方が「ジャニス・ジョプリンを見た時以来の衝撃だ!」「今までの人生で見た中で、一番のショーだ!」と大絶賛していただけました。

【独占告白】ロボットレストラン『最初は色物ショー扱いで嫌われ者だった』…その苦難の道と”転機”とは | 訪日ラボ

東京だとこういう有名人の目にとまる確立が高いのはアドバンテージだと。


■追記

知らなかった・・・。灯台下暗しもいいところ。お恥ずかしい限り。

www.youtube.com