HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

漢字は捨ててはならない文化

ベトナム人と少し話をした。私の発音はまだまだでなかなか通じない。書けばなんとか通じるレベル。

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聴いてびっくり漢字の世界―日中韓越の漢字音はこんなに似ている

聴いてびっくり漢字の世界―日中韓越の漢字音はこんなに似ている

前に書いたようにベトナム語と日本語は、多くの語彙を漢語に依っている。しかし、彼らに"chuyên môn"が「専門」で、既婚女子への尊称"bà"が「婆」だと言っても通じない。20代の彼らにとって、漢字の文化はもうとうに忘却の彼方であるらしい。中国、朝鮮、ベトナム、日本の地理的条件を書いて、それぞれに漢字の文化が伝わったと図示しても、わからない。考えてみれば、何らかの形で漢字が伝わった日本、朝鮮、ベトナムで漢字が残っているのは日本だけだ。朝鮮はハングルという日本で言えばひらがなだけの文字になり、ベトナムはアルファベットになった。不可逆な過程であり、もうそれぞれの国が漢字文化に戻ることは二度とないであろう。そもそも、本家本元の中国ですら簡体字になってしまっている。もともとの数千年前からの漢字を残しているのは台湾だけとなってしまったとも言える。

日本においてさえ、漢語を生み出す力は失われ、多くの外来語をカタカナという中途半端な表記で表すしかなくなっている。外国人の日本語学習者にとってカタカナ言葉が一番の学習の障害になっていると聞いたときは内心のけぞった。

IT技術が進み、キーボード、音声入力が進んだ今日においては逆に漢字を旧字体に戻すくらいの文化を守る努力が必要ではないだろうか?あるいは、漢語、漢文をもっともっと読ませる努力が必須ではないだろうか?教育界や、さまざまなところから反対に合うだろうが。

はてな15年の蓄積

最近、社内で働き方改革の話しをする時に、このはてなダイアリーはてなブログで書き溜めたノウハウを使うことが多くなった。まあ、まずはネットワークとコミュニケーション論。コミュニケーションが必要なノードの数の自乗にコミュニケーション量は比例するという話し。よって強力なリーダーシップを導入するか、全体としてひとつの合意、ひとつのモデルで働くことが必要となるという話。

ピクサーピッチ」も私のお気に入り。

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心理的安定性の問題もよく話す。

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その他、数えたらきりがない。なんでも続けるとよいことはあるのだとしみじみ。にしても、最近エントリーをあげる精神的余裕にかけるのが自分の問題意識。書きたいことはあるのだけど、それを文章にするだけの精神的余裕にかけるようだ。

ウルマンの間違い

ウルマンの「青春」の詩はあまりに有名だ。

青春とは臆病さを退ける勇気
やすきにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。

しかし、ウルマンの時代は60代を超えて活発な人間がそれほどいることは想像していなかったに違いない。この詩をモットーに七十、八十になっても組織のトップに君臨し、蛮勇をふるう人物に多く目に掛かることが多くなった。本当に青春、冒険心というのなら、組織のトップに君臨しつづけるのではなく、既存の組織は別の人間にゆずり自分は新たな領域に冒険に乗り出すことが必須ではないだろうか?

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もっと言えば、残念なことに学習能力を年を取るにつれてどんどん失っていく人物が多い。心理学的な研究からは、高齢化とは能力の減退以前に意思の減退だと示されている。身近な20代の組織のトップをみると本当に柔軟だ。常に学習する意欲と余地に溢れている。

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ライフシフト」のはらむ問題は年を取った時、自分が既存のキャリアを退いた後でも学習能力を維持できるか否かにかかっていると私には想える。そして、学習能力維持可能性の反証はあまりに多いと。

高齢者以外の場合の学習能力維持について書きたいことがあるが、別の機会にしたい。

「お父さんは発達障害ですか?」

子供たちと話をしていて、珍しく自分語りをしてしまった。例えばと、話したのは昔から不思議でならないのは、大学に行ったことを当たり前だと言いながら、大学でなにを勉強したのか全く覚えていない人たちがいることだと。私は、30年以上経っても主要な授業について何をどの学年で勉強したか話しができると想う。同様にしてMBAの授業。現在の仕事に当時の授業の内容の多くがつながっていることを実感できる。しかし、あまり人から褒められたり、認められたりした経験が薄い。なんというか、感情面で未発達な面があるのは自覚しているのでその一番できていない部分で自分を評価しているので、自分がやってきたことで自分を評価することはほとんどない。そんな話しをしたらタイトルの「お父さんはいまでいう◯◯◯◯(よく聞き取れなかった)という発達障害ですか?診断とか受けたことがありますか?」と子供に言われてしまった。ちょっとびっくり。

私個人としては、発達障害というからには発達の段階があってどこで踏み外したのかは最低でも明確にしろと主張している方なので、今度採用で使っているテストを自分で受けてみようかと想う。

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ある研修で話したのだが、いま身についていないスキル、特性を身につけるのは自分が子供になったつもりで発達段階のはしごを何段かおりて向き合うのが大事だと思っている。私も大人ぶるより、一旦子供に戻って自分が踏み外してしまったはしごの段はどこか見直してみるべきかもしれない。自分の生きづらさを子供から指摘される日が来るとは全く思っていなかった。

国語力の必要性

ハリウッド映画などのCG*1を手がけられるKei Yoneyamaさんのツイートが実にそのとおり!と胸に突き刺さった。

ほんの少しだが米国の教育の体験がある。米国人は数学ができないとバカにしていたら、リーダー層の米国人の英語の作文、要は国語力が圧倒的なのに気付かされた。

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確実に働き方改革、雇用の流動化は進んでいる。多くの若者は会社を辞めることに抵抗がない。若者同士、学校でも、辛かったら逃げろと教えているらしい。私のような古いタイプの人間からすれば、職場と自分の能力の一体性が高まった時に最大の生産性をあげられる、もっともクリエイティブな仕事ができると思うのだが、若い人には通じない。それはそれで構わない。同一労働同一賃金の原則が守られ、労働者側からも、雇用者側からも生涯雇用を前提としない働き方に変われれば。

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働き方改革は更にこの雇用の流動性を高めるだろう。そうした中で参考となるのは、米国流の人事だろう。現場での大きな採用権、部門毎のリストラすら可能な流動的な雇用形態、個人側での転職の繰り返し。多くの企業、個人それぞれがこれまで以上に大きなリスクを負うことになるが、個人が自分の好きな時に好きなことだけする傾向が強まれば強まるほど流動化は進む。

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一方働き方改革に関する議論を毎日のようにしていると、つまるところ人に伝わる文書、資料をいかに短時間で作って多くの人と共有するかにつきることがだんだんわかってきた。国語力とITの両輪の学習が必要だと。

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ここに立ってみると、なぜあんなに多様な人種、多様な文化、多様な言語、トップからして簡単にやめてしまう超流動的な雇用形態において、なぜ世界トップの業績を米国企業があげられているかと言えば、まさに国語力とITなのではないだろうか?詳細で適切に書かれたジョブディスクリプションとマニュアルは解雇した社員から次の社員への引き継ぎをゼロとしていると聞く。多種多様な人材であっても適切な指令が適切な表現で書かれていれば、仕事は進められる。なによりも法律文書という「呪術的」といってもいいほど最強の文書が米国を支配している。日本の感性的な国語教育ではとてもとても太刀打ちできない。根源から日本語の作文とはなんなのか?人に伝わる文章とはなんなのか?徹底的に教育する必要がある。ちなみに、IT教育のプログラミング教育とは実は国語教育であると私は考えている。

プログラミング教育と国語教育についてはまたどこかで明確にしたい。

*1:言い方古いのだろうか?「エフェクト」?

「ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密」(ネタバレあり)

ワンダーウーマン」の秘密を求めて、そのCreatorであるマーストン教授の物語を見た。私にとっては期待を裏切らない作品だった。

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「ポリアモリー」という3人の男女による愛のある共同生活。どんなものであったか、どのような「リビドー」に突き動かされたものであるかがよくわかった。まして、第二次世界大戦前の東海岸の伝統的な名門大学でこの選択をすることがどれだけ過激であり、どれだけの周囲の差別的な目で見られたか想像するにあまりある。

マーストン教授と妻のエリザベスがどれだけ知的な領域で仕事をしているかも伝わった。嘘発見器は夫妻の共同研究により開発され、ポリアモリーのパートナーであるオリーブの協力により完成したというのも一例。マーストン教授のDISC理論も大変説得力がある。なんと、現代の経営でも使われていると!

www.hrd-inc.co.jp

映画でも十分に語られているDISC理論。WIkipediaを引用、試訳する。

Marston was also a writer of essays in popular psychology. In 1928, he published Emotions of Normal People, which elaborated the DISC Theory. Marston viewed people behaving along two axes, with their attention being either passive or active, depending on the individual's perception of his or her environment as either favorable or antagonistic. By placing the axes at right angles, four quadrants form, with each describing a behavioral pattern:

  • Dominance produces activity in an antagonistic environment
  • Inducement produces activity in a favorable environment
  • Submission produces passivity in a favorable environment
  • Compliance produces passivity in an antagonistic environment.

Marston posited that there is a masculine notion of freedom that is inherently anarchic and violent and an opposing feminine notion based on "Love Allure" that leads to an ideal state of submission to loving authority.

https://en.wikipedia.org/wiki/William_Moulton_Marston

マーストンはまたポピュラー心理学のエッセイの作家でもあった。 1928年に、彼はDISC理論を詳しく述べた「普通の人々の感情」を出版した。マーストンは、個人の環境に対し優位と認識するか拮抗的だと認識するか、受動的または能動的に注意をむけるか、これら2つの軸に沿って人々は行動していると考えました。(環境認識が優位か、拮抗的か、注意の方向が能動的か、受動的かの)2つく軸を直角に配置すると、4つの象限が形成され、それぞれが行動パターンを表します。

  • 主導(優位性) 優位性は拮抗的環境における積極的活動を生み出す
  • 感化(誘導性) 誘導性は優位な環境における積極的活動を生み出す
  • 安定(服従性) 服従性は好ましい環境で受動性を生み出す
  • 慎重(妥協性) 妥協性は拮抗的な環境で受動性を生み出す

マーストンは、本質的に無秩序で暴力的な男性的な自由の概念と、愛のある権威への服従の理想的な状態を導く「Love Allure(愛の釣り針)」に基づく反対の女性的な概念があると主張した。

実際には、「環境 → 注意 → 選択」というダイナミズムがあるので、2軸での表現は不十分だが、これを図にしてみた。

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DISC Dominance Indection Submission Compliance

見れば見るほど能くできている。環境が自分にとって優位で、能動的に注意を向けていれば「誘導性」の行動となる。実際には、"DOMINANCE"という"DOMINA(神)"という言葉を含む大変強い外部表現となる。真逆で環境が自分に取って拮抗、もしくは不利であって、受動的な方向に注意(意思)を向ければ妥協的("Compliance")行動にならざるを得ない。逆に、環境が優位なで受動的であれば「服従」("Submission")になるのは、理解が容易だ。

多くのところで語られているように、「ワンダーウーマン」は真実を白状させる縄を持つ、女性という得てして「服従」、「妥協」を強いられる立場を性的な地位は保ったまま「主導」、「感化」に転じるキャラクターだ。縄は当然嘘発見器だ。他にもそれぞれ隠された意図が存在しているのだろう。

この映画の監督が雄弁に語ってくれている。

wired.jp

この映画のとてもセクシーな場面は大変楽しめた。監督の性的な嗜好があまねく発揮されていると私は想う。現代においてさえ位置づけが難しいこの映画の役柄をそれぞれの俳優が勇気をもって引き受けたことに限りなく拍手を送りたい。そしてまた、DCコミック版映画「ワンダーウーマン」の公開とほぼ同時にこの映画が公開されたことの意味は大きい。フロイドを引用するまでもなく、改めて性的な人間の根源的な力のすごさを感じた。「リビドー」とは実にうまい言葉であった。

キャッシュレス化はインボイス制度導入の布石

昨日は、キャッシュレス化の肝は給与のポイント支給だというエントリーを書いた。実は、財務省がキャッシュレス化を進めなければならない事情が厳然と存在する。インボイスの導入だ。

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keiriplus.jp

本来誰が考えても、軽減税率の導入の「前提」としてインボイス方式がなければならない。そうでなければ、仕入れにおける積み上がってきた消費税額が明確にはならない。これまでも土地や、住居系の家賃など非課税の売上が存在したわけで、仮受・仮払い消費税というくくりでは会計できない状態ではあった。

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インボイス方式は商習慣として組み込まれていれば対応可能だったかもしれないが、消費税は導入したもののインボイスなしという状況で30年あまりが経過してしまった今、紙の伝票によるインボイス経理は不可能に近い。有りうるとすれば、主要な取引のほとんどが電子化、キャッシュレス化されアプリの上で複雑なインボイスを扱うように対応することだけだと財務省は認識しているのだと私は想う。そうでなければ、財政規律を最優先で思考する財務省公明党案の軽減税率を是とするはずがない。

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企業側からしても、直接の電子化、自動化された金銭のやり取り、契約さえも電子契約化していかなければならない課題があるのも明白。

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ここまでブラックボックス化し、手でさわれないところで、会計、課税が進んだ時の金銭感覚がどうなるのか私は不安でしかたがない。