HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

クジャクの尾羽と「貨幣の複雑性」

「赤の女王」を読んでいて、クジャクの尾羽は貨幣だと改めて気づいた。

性別が生まれて以来、セクシュアリティバクテリアから人間に至るまで「貨幣」の役割を果たしてきた。そりゃ、そうだ。現在の経済行為も、自分の生存と自分の遺伝子の繁栄をかけたセクシュアリティのアピール以上に真剣にはなれない。文字通り命がけなのだ。

以前、上野千鶴子氏の「セクシィ・ギャルの大研究」を読んだときから、セクシュアリティマーケティング、貨幣は深い関係にあることを感じた。

「セクシィ・ギャルの大研究」という本は、上野千鶴子流のヒトのセクシュアリティーを広告の中で記号としてとらえるという優れた研究だと思う。このセクシュアリティーという記号は、ヒトにおいてかなり根源的なものであり、記号というひとつの単位を形成しているのだと私は理解した。

「もったいないからおもいやりへ」 複雑系の倫理学試論 第三稿 - HPO機密日誌

この記号化の最たるものが貨幣であることは、経済人類学の栗本慎一郎氏を待つまでもなく、明白である。

本書の前半の対談は、マルクスの労働と貨幣の理論から、文化人類学で扱われるような貨幣の原初形態、あるいはヨーロッパにおけるハイパーインフレの話など、貨幣の生成と消滅がテーマであった

[書評]相対幻論 context on the network world: HPO:個人的な意見 ココログ版

そして、セクシュアリティと、貨幣の本質は以下のように定式化できる。この一点においてのみ、安冨歩先生が描かれた貨幣の生成と崩壊が生じる。多くの人間の事象も同じだ。

人は人がが欲しがるものを欲しがる。

「もったいないからおもいやりへ」 複雑系の倫理学試論 第三稿 - HPO機密日誌

これを生物種のセクシュアリティに拡張すればいいだけだ。

ある(性別を持つ)生物種は同じ性別の同じ生物種が欲しがる異性をを欲しがる。

マット・リドレーは様々な生物種のセクシュアリティと線虫や、バクテリア、病原菌などと生存をかけて「赤の女王」効果により、「貨幣の複雑性」で示された貨幣の崩壊の過程のように、異性への好みも生成し、崩壊することを本書の中で示している。

ごくごくシンプルな原則によりクジャクの尾羽のような複雑で美しいパターンが生じる。人間の貨幣、多くの経済行為も同じ。そしてまた、上野千鶴子氏の指摘通り、セクシュアリティを通してつながっているところに人間への尽きない興味深さを感じる。